持続可能なイノベーションフォーラム2025、気候変動対策における企業参画の重要性など強調
(ブラジル)
調査部米州課
2025年11月11日
ブラジル・サンパウロ市内のルネサンス・ホテルで11月6~7日に、Climate Action主催の「持続可能なイノベーションフォーラム(Sustainable Innovation Forum)2025」が開催された。Climate Actionは、ロンドンに拠点を置き、気候変動対策やイノベーション、持続可能な金融などの連携を促進すべく2007年に設立された独立系の国際組織。11月10~21日にベレン市で開催される国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)の関連イベントとして、ブラジル最大の商業都市サンパウロで「持続可能なイノベーションフォーラム2025」を開催して、ビジネス界や政界などの有識者を集客し気候変動対策などについて議論を重ねる場を創出した。
フォーラムのオープニングパネルでは、2024年にアゼルバイジャンの首都バクーで開催されたCOP29で、国連気候変動ハイレベルチャンピオンに任命されたニガル・アルパダライ氏が登壇した。国連気候変動ハイレベルチャンピオンとは、COP議長の代理として、企業、自治体、市民団体などと連携し、自主的な気候変動対策の促進と拡大を支援する役割を持つ。毎年、COPの開催国から1人が任命され、前後に開催されるCOPの関係者と連携しながら活動することが求められる。アルパダライ氏はオープニングパネルの中で、COP29の成果の1つとして、パリ協定第6条についての詳細事項が決定したことを挙げ、多くの民間企業の参画がこうした成果につながったと強調した(注)。
アルパダライ氏はまた、気候変動は実際に起きていることであり、気候変動対策に向けて、政府のみならず民間企業の協力が不可欠であること、そのための行動に移すことの重要性をあらためて訴えた。そして、民間企業のコミットメントのためには、「民間企業による民間企業のためのエコシステム」が必要で、まず大企業が気候変動対策に積極的に参画し、大企業によって得られた知識や経験を中小企業に向けたキャパシティビルディングとして生かすこと、また、大企業による中小企業へのファイナンス供与も重要と述べた。アルパダライ氏はCOP30への期待として、「多様性を持つブラジルには、議長国として、多様な国との協力を促進し次のCOPにつなげていくことを期待する」と述べ、オープニングパネルを締めくくった。COP30は、パリ協定を実施段階へ移行していくための「実施のCOP」となることを目指している(2025年10月27日記事参照)。
オープニングパネルに登壇するニガル・アルパダライ氏(左)(ジェトロ撮影)
(注)パリ協定第6条は、国際的な協力によって温室効果ガス(GHG)の排出量削減や除去対策を実施するための、市場メカニズムを規定したもの。2項で2国間クレジットなどの協力的アプローチ、4項で国連が管理する多国間のメカニズム、8項で非市場型のメカニズムについて規定している。詳細は、2025年2月20日付地域・分析レポート参照。
(辻本希世)
(ブラジル)
ビジネス短信 212638b0995ff31a




閉じる
