COP30の準備会合を開催、気候変動対策を実行に移す議論を展開
(ブラジル)
調査部米州課
2025年10月27日
ブラジルの首都ブラジリアで10月13日から14日にかけて、国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)の準備会合(Pre-COP)が開催された。同会合には、ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領、ジェラウド・アルキミン副大統領兼開発商工サービス相、マリーナ・シルバ環境・気候変動相、COP30で議長を務めるアンドレ・コヘア・ラーゴ氏を含む、UNFCCC(国連気候変動枠組み条約)加盟国の閣僚や交渉担当者が参加した。
会合後の会見でラーゴ議長は、COP30が、パリ協定を実施段階へ移行していくための「実施のCOP」となることを目指すと強調。そのうえで、今回の準備会合などでの議論を通じて、国々の連携による共同イニシアチブの形成を進めていると説明した。ラーゴ議長はまた、「実施とは、協力と相互支援の取り組み」であり、締約国のみならず、企業や学術関係者とも連携することで、「完全な合意に至らずとも前進できる」と述べ、目標達成に向け、各方面の関係者と連携し、気候変動対策を実行に移していくことの重要性を強調した。
COP30戦略・調整責任者で、グローバル・ストックテイク(GST)の議論を取りまとめたトゥリオ・アンドラーデ氏は「参加国間で多くの共通点が見いだされた」と述べた(注1)。COP30のアナ・トニCEOは、ブラジルが主導する、森林保護を目的とした熱帯雨林ファイナンス(TFFF)の創設が、他の資金メカニズムとともに高く評価されたと述べた(注2)。また、同氏は「パリ協定を離脱した国は1カ国のみであり、他の国々は引き続き積極的に取り組んでいる」と報告し、気候変動対策に向け世界的な関与が継続していることも強調した。
COP30では、第1回GSTの成果を踏まえた今後の方向性、特に第2回GSTへの展開が議論の中心の1つになると見込まれている。また、途上国への気候資金についても論点になるとみられている。2024年にアゼルバイジャンのバクーで開催されたCOP29では、途上国への気候変動対策資金に関する新規目標の設定が大きな争点になった(注3)。ブラジル政府は、COP30でTFFFの創設を正式に発表するとみられている。
(注1)GSTは、2023年にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催されたCOP28で第1回が実施された、パリ協定に基づいて世界全体の気候変動対策の進捗を定期的に評価する国際的なプロセス。COP28では、世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5度に抑えると言う目標達成に向け、温室効果ガス(GHG)排出削減にむけた取り組み事項が決定文書(第1回GST決定文書)の中に盛り込まれた(2024年2月5日付地域・分析レポート参照)。
(注2)COPにおいて、議長はUNFCCC締約国間の交渉を仲介し、合意形成と目標達成を促進する役割を担う。他方でCEOは、議長を補佐し、COP30に関連する方針の策定、実施、各部門の調整を担当する、会議全体の運営を支える実務的な責任者。
(注3)COP29では、途上国向けの気候変動対策資金として、2035年までに先進国主導のもと、少なくとも年間3,000億ドルを拠出するという目標が設定された。ただ、この目標額に対して途上国からは、「中国を除く途上国は、気候資金として2035年までに1兆3,000億ドルが必要」との批判が相次いだ。
(辻本希世)
(ブラジル)
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