タイ商務省、トランプ米政権と貿易協定の枠組み合意
(タイ、米国)
バンコク発
2025年11月07日
タイ政府のスパジー・スタンパン商務相は10月26日、米国タイ相互貿易協定の枠組み合意に至ったと発表
した。米国によるタイへの相互関税率は19%に据え置かれ(2025年10月28日記事参照)、関税の免除対象となる品目が拡大され、特定される見通しだ。
米国通商代表部(USTR)が同日発表したファクトシート
によると、主な合意事項は次のとおり。
〇タイによる米国産品の購入:航空機80機(188億ドル)、飼料用トウモロコシ、大豆、蒸留乾燥穀物など年間26億ドル、エネルギー年間54億ドル〔液化天然ガス(LNG)、石油、エタンなど〕
〇タイ側の非関税障壁:工業製品で、米国車(米連邦当局安全・排出基準)や、米医薬・食品局(FDA)認証済みの医薬品・医療機器の受け入れ、米国産エタノール燃料の輸入許可付与、関税法の改正(違反・罰金に関わる報酬制度の撤廃)、規制慣行改善に向けた措置実施・運用。農産品では、米国食品安全検査局(FSIS)認証の肉類のタイへのアクセス拡大、蒸留乾燥穀物など園芸用品の輸入規制緩和への対処、米政府当局が発行した既存証明(書)の受け入れ
〇経済安全保障の連携強化:第三国による不正貿易的な規制・慣行に対する補完措置や輸出管理、投資セキュリティー、関税回避(注)などで両国が連携
〇労働環境:結社の自由や団体交渉権の完全保証、強制・児童労働上の高リスク分野での違法行為の取り締まり強化、高水準の環境規制の採用維持や運用
〇デジタルサービス貿易:デジタルサービス税(DST)導入禁止、信頼ある越境データフローの確保、WTO上の電子送信に対する関税賦課に関する恒久モラトリアム支持、タイ発行のデビットカードへの国内電子決済処理、タイ通信産業における外国支配権の規制撤廃
〇知的財産:商標上の模倣品、著作権上の海賊版の取り締まり強化、不正な団体管理組織への対応、技術保護の迂回措置への対処、未処理の特許案件への対応
タイ商務省によると、今回合意した枠組みに法的拘束力はなく、2025年内の交渉妥結を目指す方針だ。今後数週間議論し、協定署名に向けた準備を行う。対米交渉を担うタイ政府の省横断的タスクフォースは、エクニティ・ニティタンプラパス副首相兼財務相がリードする。
(注)トランプ政権が懸念視する迂回貿易への対処や具体的なルールについては、ベトナムと同様に、明らかにされていない(2025年10月29日記事参照)。
(藪恭兵、シリンポーン・パックピンペット)
(タイ、米国)
ビジネス短信 0565714a50a3ab08




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