トランプ米政権、マレーシア・カンボジア・ベトナム・タイと通商合意、関税削減から経済安保まで網羅
(米国、マレーシア、カンボジア、ベトナム、タイ)
ニューヨーク発
2025年10月28日
米国のトランプ政権は10月26日、マレーシア、カンボジア、ベトナム、タイの東南アジア4カ国との通商協議の進展を発表した。マレーシアおよびカンボジアとはそれぞれ通商協定で合意し(Agreement)、今後は発効に向けた国内手続きを進める。ベトナムおよびタイとはそれぞれ枠組み合意に至り(Framework for an Agreement)、今後も最終合意を目指して協議を継続する。今回の合意には、関税削減だけでなく、米国と各国が輸出管理、経済制裁、投資審査、迂回輸出防止などの経済安全保障を含めた広範な領域で連携を強化する内容が含まれている。
米国の発表によれば、米国は上記4カ国に対する相互関税を8月7日に変更した税率で維持する(マレーシア:19%、カンボジア:19%、ベトナム:20%、タイ:19%、2025年8月1日記事参照)。また、9月5日の大統領令の付属書3の品目リスト(2025年9月8日記事参照)に基づき選定した特定品目に対しては相互関税を免除する。
一方で、東南アジア4カ国は、米国原産の工業品・農産品に対する関税を削減するとともに、非関税障壁を撤廃し、米国産品の市場アクセスを拡大する。また、米国製の航空機、半導体、液化天然ガス(LNG)などの購入や、対米投資を拡大する内容なども記載された。
こうした内容は、これまでの米国と日本、英国、EUなどとの合意と共通する部分が多い。また、今回の合意には、知財、労働、デジタル貿易、原産地規則、経済安全保障などの分野まで含めて将来の協力条項も盛り込んでおり、さながら経済連携協定(EPA)のような内容となっている。
具体的には、マレーシアおよびカンボジアとの合意では、両国が知財保護強化に取り組むことや強制労働産品の輸入規制を導入することなどが規定された。さらに、両国内で事業を行う第三国企業が米国にダンピング輸出などを行っている場合、米国の要請に基づいて対処すること、両国が輸出管理、経済制裁、投資審査の分野で米国と連携すること、迂回輸出防止に取り組むことなど、経済安全保障分野のさまざまな協力内容が盛り込まれた。これらの条項は、中国を念頭に置いた米国の通商措置との整合性を高めることで規制の「抜け穴」をふさぎ、実効性を強化する考えがあるとみられる。
併せて、米国はマレーシアおよびタイと重要鉱物分野での協力覚書を締結した。重要鉱物の調査・採掘・加工・精製・製造・回収・リサイクルなどでの貿易および投資の拡大を目指す内容となっている。
上記の合意や覚書について、米国政府の発表資料は次のとおり。
(葛西泰介)
(米国、マレーシア、カンボジア、ベトナム、タイ)
ビジネス短信 43b6f555240037b5




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米国の第2次トランプ政権が発表した関税措置により、賦課対象となった地域に展開する日本企業の事業運営にも影響が予想されます。