高まるIPOへの関心、マレーシアのスタートアップ向け日本進出セミナーを開催

(マレーシア、ASEAN)

クアラルンプール発

2025年10月17日

ジェトロは9月29日、東京証券取引所と共催で、「Malaysia-Japan Innovation & Capital Forum 2025」を開催した。本セミナーは、日本取引所グループとジェトロの協働に関する覚書(2022年11月7日発表資料参照)に基づく取り組みの一環として、ベトナム(2024年11月13日記事参照)、シンガポール(2024年11月29日記事参照)、インドネシア(2025年5月30日記事参照)に続いて開催された。フォーラムでは、東証や日本での新規株式公開(IPO)を支援する金融機関、ベンチャーキャピタル(VC)、マレーシアのスタートアップから講師を招き、参加企業に対して日本進出の促進や日本マレーシア間の協業連携促進をテーマに講演した。

写真 登壇者と主催者の集合写真(ジェトロ撮影)

登壇者と主催者の集合写真(ジェトロ撮影)

東証上場推進部の岩瀬浩課長は、「日本とゆかりのあるアジアの有力企業にフォーカスし、日本市場でのビジネスの拡大や東証でのIPOなどを支援する取り組みとして2024年に『東証アジアスタートアップハブ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます』を立ち上げた」と経緯を説明した。

日本に現地法人を設置し日本企業との事業も進める、マレーシア発のドローンソリューション企業エアロダイングループのカマルル・A・ムハメドCEO(最高経営責任者)は「進出のきっかけは日本のマーケットに長期的なポテンシャルを感じたこと。日本への事業拡大に際して、単なるドローンサプライヤーではなく、人工知能(AI)を活用したデータドリブンな取り組みにシフトした」と、市場に合わせて戦略を適用させる必要性を説いた。

ジェトロの支援サービスを活用し、日本への進出を進めているフィンテック企業、ソフトスペースのクリス・レオン・チーフストラテジーオフィサーによると「コロナ前と比較して日本のビジネス環境はかなりオープンになったと感じる。特にフィンテックの分野は事業親和性の高い日本企業から出資を得ることができ、事業が拡大している」とした。同社は近距離無線通信(NFC)対応端末や金融機関向けの安全な決済ソリューションを提供する企業で、日本含む複数カ国でiPhoneのタップ決済機能を提供するマレーシア唯一の公認プロバイダーだ。

マレーシア証券取引所によると、2024年のIPO件数は55件と、過去19年間で最多だった。2025年は10月時点でIPO件数が43件に到達しており、同社ファディル・モハメドCEOが掲げる年間60件という目標の達成も現実味を帯びてきている。マレーシア企業にとっても、IPOがエグジットの選択肢の1つとして近年注目されていることがうかがえる。

写真 カマルル氏登壇の様子(ジェトロ撮影)

カマルル氏登壇の様子(ジェトロ撮影)

(都築佑樹、ハズミ・マンソール、アンドリュー謝克耀)

(マレーシア、ASEAN)

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