欧州委、森林破壊デューディリジェンス規則の簡素化と適用実質延期法案を発表
(EU)
ブリュッセル発
欧州委員会は10月21日、森林破壊防止デューディリジェンス規則(EUDR、2023年6月13日記事参照)の簡素化法案を発表した(プレスリリース
)。同法案は、適用時期を実質的に延期するほか、これまでガイドラインの改定にとどめていたデューディリジェンス(DD)実施義務の軽減措置(2025年4月17日記事参照)を法改正によってさらに踏み込むものだ。既に1度延期している適用開始時期が12月30日に迫る中(2024年12月5日記事参照)、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は、議論を呼ぶDD実施義務自体の簡素化を含む法案を約2カ月という短期間で採択できるのか注目される。
まず、DD実施義務については、事業者と取引事業者がそれぞれ負っていることから、この重複を解消する。DD実施義務の対象について、EU市場に輸入・供給する、あるいはEU市場から輸出するサプライチェーンの上流にある事業者(operator)に限定し、EU市場に輸入・供給済み商品を扱う事業者と取引事業者については免除する。免除対象となるのは、取引事業者(trader、注1)と、新設する「下流事業者」(注2)だ。ただし、サプライチェーンにおける影響力を考慮し、大規模な取引事業者と下流事業者には、ITシステムへの登録を義務付ける。トレーサビリティー確保の観点から、事業規模にかかわらず、取引事業者と下流事業者には、上流事業者が提出したDD宣言書の参照番号などの収集を求める。
また、低リスク国の零細・小規模事業者で、自身の土地で栽培、収穫、飼育した商品をEU市場に供給、あるいはEU市場から輸出する「零細・小規模一次事業者」(注3)の区分も追加した。当該事業者については、DD宣言書の提出を免除する一方で、上流事業者ということから、代替として1回限りの簡易版宣言書の提出を求める。
適用開始時期では、零細・小規模事業者については6カ月延期し、2026年12月30日から、それ以外の事業者については現行規則どおり、2025年12月30日からとしている。ただし、猶予期間として2026年6月30日までは加盟国当局は検査を実施しないとしており、実質的な延期とみられる。
(注1)EU市場のサプライチェーンで対象品目を輸入・供給する事業者以外の者。小売事業者など。
(注2)対象品目をEU域内の事業者から仕入れ、別の対象品目に加工し、EU市場に供給する事業者。例えば、対象品目のココアバターを輸入する企業(上流事業者)から、ココアバターを買い付け、別の対象品目であるチョコレートを製造し、供給する企業。
(注3)EU市場に直接輸出する域外農家・林業者は限られており、EU全加盟国は低リスク国に分類されていることから、主な対象は域内農家・林業者だ。
(吉沼啓介)
(EU)




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