米商務省、ロボット・産業機械、個人用防護具(PPE)・医療機器の232条調査開始

(米国)

ニューヨーク発

2025年09月26日

米国商務省産業安全保障局(BIS)は9月2日、1962年通商拡大法232条に基づき、ロボット・産業機械、個人用防護具(PPE)・医療用消耗品・医療機器(デバイスを含む)の輸入に対する調査を開始した。9月26日に公示予定の官報案で明らかにした(ロボットなどPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)PPEなどPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。

232条は、特定製品の輸入の拡大が米国の国家安全保障に脅威を及ぼすと商務長官が判断した場合に、追加関税などの輸入制限措置を発動する権限を大統領に認めている(注1)。

官報案では、調査対象となる品目の具体例を示した。ロボット・産業用機械では、プログラム可能なコンピュータ制御機械システムとして、CNCマシニングセンタ、旋盤・フライス盤、研削・バリ取り装置、産業用プレス機械、自動工具交換装置、治具、切削・溶接・ワークハンドリング用工作機械などを挙げた。そのほか、金属の処理、成形、切断に使用される用途特化型の特殊金属加工設備(オートクレーブや工業用オーブン、金属仕上げ・処理設備、放電加工機、レーザー・水切断工具・機械など)なども例示した。なお、無人航空機システム(UAS)については、232条調査が別途進んでいるため(2025年7月16日記事参照)、対象外としている。

PPEは、医療現場で使用される外科用マスク、N95マスク、手袋、ガウンなどを挙げた。医療用消耗品は、患者の診断、治療、疾患予防のための単回または短期使用の物品で、注射器、針、輸液(IV)ポンプ、鉗子(かんし)、メス、静脈内(IV)バッグ、カテーテル、気管切開チューブ、麻酔装置、ガーゼ・包帯、縫合糸、診断・検査用試薬などを含む。ただし、医薬品に対する232条調査は別途進んでいるため(2025年4月15日記事参照)、処方薬、市販薬、生物学的製剤、特殊医薬品などは対象外となっている。医療機器は、医療現場で使用される耐久性のある機器、器具、機械を広く指すとし、車椅子、松葉づえ、病院用ベッドを例示した。医療用デバイスは、病状の診断、モニタリング、治療に使用されるあらゆる器具、装置、機械として、ペースメーカー、インスリンポンプ、冠動脈ステント、心臓弁、補聴器、義肢、血糖値モニター、整形外科用器具、電気医療機器(コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴画像装置)、電気外科装置、X線装置やその他の放射線機器、呼吸器を例示した。

いずれの調査も、パブリックコメントを募集する。官報掲載後21日以内に提出する必要がある。コメントは連邦政府のポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから提出できる(注2)。

BISは特に意見を募りたい項目として、特定の少数の国やサプライヤーからの輸入の集中度とそのリスク、外国政府の補助金などが米国内製造業者に与える影響、国家主導の過剰生産などによる人為的な価格抑制がもたらす経済的影響、外国による輸出制限の可能性、米国内の生産能力拡大の実現可能性、関税などの追加措置の必要性などを挙げた(注3)。

(注1)232条に基づく調査、報告、措置決定などの手続きの詳細は、2024年12月10日付地域・分析レポート参照

(注2)ロボットなどの調査のIDはBIS-2025-0257、PPEなどの調査はBIS-2025-0258。

(注3)2つの調査ともに、ほぼ同様の項目が挙げられているが、ロボット・産業機械には「米国製造業雇用に与える影響」「国家安全保障に不可欠な物品の生産または国家安全保障に関連する活動における将来の役割」が含まれている。

(赤平大寿)

(米国)

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