9月のEV販売台数が3割増、BYDが急伸

(英国、中国)

ロンドン発

2025年10月15日

英国自動車製造者販売者協会(SMMT)は10月6日、9月の新車登録台数(速報値)が31万2,891台で外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、9月単月としては2020年以降で最多を記録したと発表した。

9月の新車登録台数のうち、電気自動車(EV、注1)が全体の約半数(50.8%)を占め、前年同月比で32.9%増加した。うちバッテリー式電気自動車(BEV)は29.1%増の7万2,779台で、単月としては過去最高を更新した。ハイブリッド車(HEV)は23.5%増の4万7,885台、プラグインハイブリッド車(PHEV)は56.4%増の3万8,308台と、いずれも2桁の伸びを示した。SMMTは、メーカーによる値下げや、EV車種の拡充に加え、EV補助金制度(2025年7月17日記事参照)の導入がBEV販売を後押ししたと指摘している(注2)。英国政府は、2024年から一定割合のゼロエミッション車(ZEV)の販売を義務付けており(ZEVマンデート)、9月の新車登録車うち22.1%をZEVが占めた(注3)。

メーカー別では、中国メーカーの比亜迪(BYD)が1万1,271台と、前年同月(1,150台)の約10倍に急増した。現地メディアは「BYDは政府の新補助金制度の対象から除外された」が、「価格面で競合他社を圧倒」し、「BYDにとって英国は中国国外で最大のマーケットとなった」と報じている(10月6日付「フィナンシャル・タイムズ」紙)。他の中国系の奇瑞汽車(チェリー)も、英国に「Jaeco(ジャクー)」「Omoda(オモダ)」ブランドを投入し、売り上げを伸ばした。スポーツ用多目的車(SUV)のPHEV「ジャクー7」は販売開始後1年足らずで、9月の自動車販売台数第4位にランクインした。一方、現地メーカーでは、ジャガー・ランドローバーがサイバー攻撃の影響を受け、9月の生産を全面停止した(2025年9月29日記事参照)。

2025年1~9月の累計新車登録台数は157万8,172台で、前年同期比4.2%増の微増だった。BEV(34万9,414台)が29.4%増、PHEV(17万2,639台)が38.2%増で、全体の増加を牽引した。ガソリン車(74万9,794台)は全体の47.5%を占めたものの、8.2%減と低調だった。

(注1)バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HEV)の合計。

(注2)製造時の排出ガス規制により、中国メーカーは実質的に対象外となっている。

(注3)ZEVマンデートの当初目標値28%を下回った。なお、英国政府は2025年4月、自動車メーカーを支援するために緩和措置を導入し、義務達成に関する柔軟性を拡大している(2025年4月15日記事参照)。

(バリオ純枝)

(英国、中国)

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