サウジ企業、アルジェリアのエネルギー分野に初進出
(アルジェリア、サウジアラビア)
パリ発
2025年10月22日
アルジェリア国営炭化水素公社ソナトラックとサウジアラビアの企業ミダッド・エナージ・ノース・アフリカは10月13日、ソナトラック本社において、アルジェリア南東部にあるイリジ南部地区を対象に、炭化水素の探査および開発に関する生産分与契約(注)を締結した(10月13日付同社プレスリリース)。
契約期間は30年間で、最大10年間の延長が可能とされている。また、探査期間として7年間が設定されている。契約期間終了時点での天然ガス、コンデンセート(ガス田から採取される原油の一種)などの予想生産量は、原油換算で合計9億9,300万バレルと見積もられている。
探査および開発にかかる総投資額は約54億ドルで、ミダッド・エナージ・ノース・アフリカが全額を負担する。そのうち、2億8,800万ドルが探査投資に充てられる見込みだ。
本契約は、炭化水素部門における外資系企業の参入を促進して新規ガス田の開発を早期に行うことを目的として、アルジェリアにおいて2019年12月11日に導入された炭化水素法第19-13号(2020年1月21日記事参照)の枠組みの下で締結されたもの。ソナトラックは同法を活用して多数の外国企業との提携を進め、リスクが高い新規ガス田の開発に取り組んでいる。実際、2025年7月にはイタリアのENI、フランスのトタルエナジーズなどの外国企業と複数の生産分与契約を締結した前例がある(2025年8月27日記事参照)。しかし、外国パートナー企業が探査および開発にかかる総投資額を全額負担することが明確にされたのは、今回が初のケースだ。また、エネルギー分野において、サウジアラビア企業としてはアルジェリアへの初の大規模な参入実績となる。
ミダッド・エナージ・ノース・アフリカのシェイク・アブドゥレラー・ビン・モハンマド・ビン・アブドゥッラー・アル=アイバン最高経営責任者(CEO)は契約締結の際、現行の炭化水素法について、「投資に対して現代的かつ明確で魅力的なビジョンを確立した」と評価し、進出を可能にしたと説明した。締結式に出席したアルジェリア駐在のサウジアラビアのアブドゥッラー・ベン・ナセル・アル=ブサイリ大使もまた、この契約が「アルジェリアとサウジアラビア間の特別な関係」を象徴しており、両国の指導者が2国間関係を両国の潜在力に見合った水準へと高めようとする意志を示していると述べた(10月13日付国営通信社「アルジェリア・プレス・サービス」)。
(注)生産分与契約(PSA:Production Sharing Agreement)は、政府もしくは国営企業と別のパートナー企業が結ぶ契約で、主に石油や天然ガスなどの資源を対象としている。パートナー企業側は、原則探査や開発にかかる費用とリスクをすべて負担し、政府もしくは国営企業側は、資源の所有権を保持したまま、将来の生産物の一部を受け取る契約形態となる。この契約方式では、企業が資源を見つけられなければ投資を失う可能性もあるが、成功すれば生産物の一部を得ることで利益を回収する。
(ピエリック・グルニエ)
(アルジェリア、サウジアラビア)
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