ソナトラック、新時代のエネルギー戦略をTICAD9で発表
(アルジェリア、日本、米国、イタリア、中国)
パリ発
2025年08月27日
アフリカ最大企業であるアルジェリア国営炭化水素公社ソナトラックのフェルハット・ウヌイ副総裁は8月20日、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)併催の「TICAD Business Expo & Conference(TBEC)」(2025年8月20日記事参照)のプレナリーセッション「日・アフリカ新時代を切り拓く(第1部:アフリカのビジネスチャンピオン)」に登壇した。
同社の短期戦略として、外国企業と提携し、化石燃料の継続的な開発を進める意向を表明した。開発中のガス田では、生産能力強化や維持を目的に継続的な投資を行うと述べた。新規ガス田の開発も並行して進める方針を示した。国家炭化水素開発庁(ALNAFT)は2024年、5つの区域における新規ガス田の共同開発開始に向け、国際入札「Algeria Bid Round 2024」を実施した。アルジェリア政府は、外資系企業の参入を促進する目的で2019年に炭化水素法を導入し、より柔軟な契約枠組みとより有利な税制を規定して以来(2024年6月21日記事参照)、初めての国際入札となった。ソナトラックは同入札結果に基づき、2025年7月に中国のシノペック、イタリアのENIなど複数の外国企業と5件の天然ガス探査契約を締結した。投資総額は合計約6億ドルに達する。ウヌイ副総裁は今後、同様の入札を通じて新規ガス田の共同開発を推進したいと説明した。
また、中期的には、ソナトラックは2026年をめどに、外国企業との協力のもと、国内でのシェールガスの開発を本格的に開始することを明らかにした。同社は現在、シェールガス開発に関する合意締結に向けて、米国の石油メジャーと交渉を進めている。米エネルギー情報局(EIA)の発表によると、アルジェリアの技術的に回収可能なシェールガスの埋蔵量は707兆立方フィート(約20兆立方メートル)であり、中国、アルゼンチンに次いで、世界3位と推定されている。
長期的なプロジェクトとして、同社はグリーン水素の開発にも積極的に取り組んでいる。グリーン水素の展開に関しては、北アフリカ諸国が世界最大級の日照時間、風力の条件などに恵まれる中、アルジェリアは輸出先である欧州市場に近接しており、さらにイタリアやスペインとのガスパイプラインなど、既存の炭化水素インフラを有するという優位性をアピールした。既存インフラをグリーン水素の輸送に活用することで、コストは他国よりも低く抑えられ(2024年10月29日付地域・分析レポート参照)、競争上有利な立場にあると説明した。また、2030年開通予定の北アフリカとイタリア、オーストリア、ドイツを結ぶパイプラインを通じて、欧州へグリーン水素の供給を目指す(2024年10月21日記事参照)。加えて、スペイン経由でベルギーやオランダ向けの供給も検討しているという。
化石燃料分野では、日揮や伊藤忠商事など日本企業との豊富なパートナーシップの歴史があり、ウヌイ副総裁は、新規プロジェクトにおいても日本企業との新たなビジネス機会を模索していきたいとの姿勢を示した。
プレナリーセッション「日・アフリカ新時代を切り拓く(第1部:アフリカのビジネスチャンピオン)」の様子(ジェトロ撮影)
プレナリーセッションでのソナトラックのウヌイ副総裁(左から3人目)(ジェトロ撮影)
(ピエリック・グルニエ)
(アルジェリア、日本、米国、イタリア、中国)
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