深セン市、空飛ぶクルマなどに最大3,000万元の補助
(中国)
広州発
2025年10月21日
中国広東省の深セン市交通運輸局は「低空経済の質の高い発展を促進するための若干の措置に関する実施細則」を9月30日に発表した。2023年12月に発表した同措置では、低空経済のサプライチェーン上の企業の育成、技術イノベーションの奨励、応用シーンの拡大、産業に関わる環境の整備の4分野について、2026年末までを実施期間として20項目の支援措置を提示していた。今回公表した実施細則は、同措置の期間内に実施する助成プロジェクトの適用対象や条件などを具体的に示した。
主な助成対象、条件などは次のとおり。
(1)eVTOL(電動垂直離着陸機)・無人航空機の認証取得
中国民用航空局から型式証明と製造許可証を取得し、深セン市内で事業を展開する企業に対して補助金(一時金)を支給する。有人eVTOLに対しては、1,500万元(約3億1,500万円、1元=約21円)、大型無人航空機には500万元、中型無人航空機には300万元を支給する。同一型式への補助は1回限りとし、1社当たりの年間助成上限額は3,000万元。
(2)低空物流配送
(ア)新規航路の開設奨励金(1航路につき1回限り)として、小型無人航空機には、年間飛行回数が5,000回以上に達した場合、20万元を支給する。大型・中型無人航空機には、新規路線ごとに年間飛行回数が1,000回に達した場合、35万元を支給する。
(イ)年間総飛行回数に応じた奨励金を別途支給する。
(ア)と(イ)の合計による1社当たりの年間補助上限額は2,000万元。
(3)一般航空短距離輸送
(ア)航路ごとの補助金(1航路につき1回限り)として、国内路線(深セン市を起点、または終点とした認可路線距離が25キロ以上の路線、以下同)の定期運航を行う企業には、各路線の年間運航便数が100便以上の場合、30万元を支給する。深セン~香港間のクロスボーダー路線には、100万元を支給する。
(イ)総飛行便数奨励金として、国内路線と深セン~香港路線のそれぞれに対して、年間総運行便数に応じた奨励金を別途支給する。
(ア)と(イ)の合計による1社当たりの年間補助上限額は600万元。
(4)研究機関設立
国家民用航空主管部門から認定された「民用航空重点実験室」を深セン市に設立する企業や大学、研究機関には、実際の総投資額の30%を上限に、最大1,000万元の補助を支給する。
中国では、空飛ぶクルマの開発が急速に進んでいる。8月には上海時的科技が安徽省蕪湖市で生産拠点の新設を発表したほか(2025年8月13日記事参照)、中国長安汽車集団も空飛ぶクルマの開発や海外展開に意欲を示している(2025年8月5日記事参照)。また、電気自動車(EV)メーカーの小鵬汽車(Xpeng)傘下でエアモビリティーを開発する広東匯天航空航天科技(AeroHT)は10月12日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで自社製の分割型空飛ぶクルマ「Land Aircraft Carrier(陸地航母)」(注)の国際品評会を開催し、同機で海外初の有人飛行を披露した。中東地域の関係企業・団体との間で600台の購入契約を締結し、同分野で最大規模の海外受注が成立したとしている。なお、同社は広州市の製造基地が9月に完工し、2026年の量産に向けた準備を整えたとしている。
(注)陸上走行モジュールと飛行モジュールから構成される。各モジュールは完全分離でき、飛行時は飛行モジュール単体で飛行、地上走行時は飛行モジュールを陸上走行モジュール内に完全収納した状態で走行する。
(梁梓園)
(中国)
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