中国長安汽車集団が設立、次世代自動車の開発に注力
(中国)
成都発
2025年08月05日
中国国務院国有資産監督管理委員会(国資委)の7月30日付発表によると、中国兵器装備集団から分離し、国資委傘下の中央国有企業として独立した中国長安汽車集団(本社:重慶市、以下、中国長安汽車)は7月29日、重慶市で設立式典を開いた。式典には、袁家軍・重慶市共産党委員会書記や張玉卓・国資委主任、朱華栄・中国長安汽車董事長らが出席した。
袁書記は、中国長安汽車の再編は国有企業改革の深化などにおいて非常に重要な成果であると評価しつつ、同社に対して西部地域から中国全土、世界へ事業展開を進めていくことへの期待を表明した。また、「重慶市は中国長安汽車を支援する政策措置を実施し、質の高いサービスを提供し、同社が国際競争力を強化し、自主コア技術を有する世界一流の自動車企業になることを支援する」と強調した。
中国長安汽車は7月30日に、設立後初めてとなる記者会見を開いた。朱董事長は、2030年までに同社の年間生産、販売台数をそれぞれ500万台に引き上げ、年間販売台数に新エネルギー車が占める割合を6割超、海外販売が占める割合を3割超とする目標を明らかにした(注1)。また、朱董事長は「未来の自動車は学習能力を持つロボットのようなスマートカーになるだろう。今後10年間で次世代自動車の開発に2,000億元(約4兆円、1元=約20円)を投資し、イノベーション人員として1万人を新規雇用する」と表明した(「上遊新聞」7月30日)。さらに、同社が今回の再編によって「厳しい市場競争の中において新たな道を切り開き、世界的にも高い競争力を持つ企業になる」と今後の展望を示した(「新京報」7月30日)。
中国長安汽車は7月27日付で重慶市江北区に登記され、登録資本金は200億元、117社の子会社を有し、自動車および部品の製造、販売、金融・物流サービス、二輪車などの事業を幅広く展開する(注2)。同社の関係者によると、今後、同社は新質生産力(注3)を代表するスマートカーや空飛ぶクルマ、エンボディドAI(人工知能)(注4)などを発展させ、東南アジア、中東、中南米、欧州市場への展開を加速するとしている(「中国汽車報」7月29日)。
(注1)長安汽車の2024年の自動車生産台数は前年比1.6%増の262万5,658台、販売台数は5.1%増の268万3,798台、国外市場での販売台数は53万6,196台、新エネルギー車(NEV)の販売台数は73万4,615台だった(2025年1月14日記事参照)。
(注2)長安汽車と、湖北省武漢市に本社を構える東風汽車は2025年2月、それぞれの親会社である中国兵器装備集団と東風集団が他の中央国有企業と経営統合に向けた準備を進めていると発表し、複数のメディアは、両社が経営統合するとの見方を報じていたが、東風汽車は6月5日、当面は関連資産や事業の再編に関与しないと明らかにした(「第一財経」2025年6月5日、2025年6月19日記事参照)。
(注3)中国中央電視台(CCTV)の解説によると、新質生産力とは、技術の革命的なブレークスルー、生産要素のイノベーティブな配置、産業構造の深い転換・レベルアップにより生み出される先進的な生産力とされる。
(注4)物体を操作したり、人とコミュニケーションを取り物理的な作業を支援したりする、身体性を持つエージェントベースのAIシステム。
(王植一)
(中国)
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