欧州企業の米国事業に多大な不確実性、232条追加関税の影響大きく

(EU、欧州、米国)

ブリュッセル発

2025年10月30日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は10月27日、欧州企業が米国市場で直面する課題に関する調査結果PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。調査は9月に実施し、合計342の企業・団体が回答した。

米国市場をEU域外最大の輸出先市場としている企業もあり、欧州企業にとって引き続き成長著しい戦略的に重要な市場だ。しかし、米国の矢継ぎ早の関税措置や、通商政策の不確実性・不安定さ、関連手続きや通関に伴う負担増加は欧州企業に大きくのしかかっている。

回答者の73%は関税措置が事業に悪影響を与え、59%は米国市場での競争力低下につながったとした。特に、1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム・銅製品に対する50%の追加関税(2025年8月4日記事2025年8月19日記事参照)の影響は大きく、長年の取引が中止になるなど、実質的に米国市場から締め出される欧州企業も出ている。

同調査では、こうした232条に基づく関税措置への強い懸念が示された。47.5%は長期的な見通しや関税問題の解決に不安を抱え、35.2%はコストの上昇、17.8%はサプライチェーンの混乱につながったと回答した。32.1%は自社製品が対象となるか容易に判断できなかったとした。また、規制の内容が安定しないことや、トランプ政権の政治的優先課題の変遷に左右され、関係者との協議も十分でないことも、欧州企業にとって不安要素となっている。

加えて、回答者の約4分の1は検査や提出書類の増加を経験し、14.3%は米国税関当局に製品が誤って分類・評価されるなど、企業の手続き面の負担や物流の遅延なども増大している。

ビジネスヨーロッパは、EU企業の米国市場での競争力維持に向け、EUに対し、特に影響が大きい鉄鋼・アルミ・銅製品への追加関税問題の迅速な解決や、8月の米国との共同声明(2025年8月22日記事参照)の実現に優先的に取り組むことが必要だと指摘している。産業界からは、米国と対話を継続し、優先的に次の3点への取り組みが求められているとした。

  1. 関税の安定性:EU製品に対する関税撤廃、もしくは税率の安定。
  2. 税関手続きの簡素化:関連手続きを効率化し、提出書類を軽減することで、貿易を円滑化。関税率の変更は一貫し、税関や事業者への周知を徹底。
  3. 規制協力:EUと米国間での規格の標準化や、規制の簡素化・効率化を進め、企業の規制順守に伴うコスト負担を軽減。

(滝澤祥子)

(EU、欧州、米国)

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