日系海上物流大手ONEパキスタンのトップに聞く
(パキスタン)
カラチ発
2025年10月09日
日系海上物流大手で川崎汽船、商船三井、日本郵船が出資するOcean Network Express(ONE)パキスタン支店に9月8日、マネージング・ダイレクターとしてファイヤズ・クンドゥカー氏が着任した。同氏に、パキスタンの海上物流に関する動向や今後の展望などについてインタビューを行った(インタビュー実施日:9月30日)。
ONEパキスタンのマネージング・ダイレクターファイヤズ・クンドゥカー氏(ジェトロ撮影)
海運ビジネスは順調に推移
ONEは、コンテナ輸送に特化したサービスを提供しており、それ以外の海運・物流関連事業を中心に据える親会社と事業の差別化を図っている。パキスタンにおけるONEの海運取扱量は全体の6%を占め、月間取扱量は輸出6,000TEU(注1)、輸入8,000TEUとなっている。2025年に入り、インフレ率も落ち着きを見せるなど(2025年9月30日記事参照)、パキスタンの経済状況が回復基調にある中、ONEを含め国内の海運業界の景況感は全般的に上向きといえる。昨今の中東情勢のさまざまな混乱や米国トランプ関税に起因する貿易縮小の可能性に関しては、当初想定したほどのネガティブなインパクトは今のところ認められない。逆にトランプ関税が発表されて以降、相当量の駆け込み需要があった。
今後、物流への大きな影響が見込まれるのが、2025/2026年度(2025年7月~2026年6月)以降に適用される自動車分野の関税合理化政策、中古車の商業輸入開始・許容年式の拡大だ(2025年10月6日記事参照)。政府は、IMFから要求されている貿易自由化を見据え、自動車部品などの関税引き下げを進める。輸入量は順次増え、結果として輸入関税の税収増になる。これら新政策は、経済状況や業界団体の実態に即して都度、修正が入ることも想定される。海運ビジネスに与える影響も注視していく。
カラチ港の地理を生かした物流拡大
カラチ港をハブとした中央アジア向け物流には、一定の需要がある。さらにアフガニスタン経由でウズベキスタン向けの輸送チャネルが組成できれば、カラチ港の地理的特性を生かすことができる。アフガニスタン陸路の貨物の安全確保、復路での空コンテナを減らす工夫など、解決すべき課題は多いが、物流戦略の1つになる。ウズベキスタンは南西アジア諸国へ綿花を輸出しており、空コンテナ対策は検討できる。
中国が「中国パキスタン経済回廊計画(CPEC)(注2)」の一環で整備したグワーダル港は、地理的にイランのチャーバハール港に近いため、イランとの2国間の海運の面で優位性は高い。しかし、同港は、商業都市カラチから630キロ以上と遠いことや、陸路上の治安問題があり、商業ベースでこの港を活用するのはまだ難しく、現状、中国関連の商船が使用しているにとどまる。
クンドゥカー氏はバングラデシュ出身で、直近ONEバングラデシュでマネージング・ダイレクターを務めた。今後は、カラチ港やビンカシム港のターミナル活用拡大や、パキスタンの地理的優位性を生かした新規物流ルートの可能性などを検討していくという。
ONE社の船舶(ONEパキスタン提供)
(注1)20フィートで換算したコンテナ個数を表す単位。20フィートコンテナ1個分が1TEU。
(注2)中国の「一帯一路」構想で計画される経済回廊の1つ。中国の新疆ウイグル自治区カシュガルから、パキスタンのアラビア海沿岸にあるグワーダル港を結ぶ全長約2,000キロの巨大インフラ事業。
(糸長真知)
(パキスタン)
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