中銀、9月も政策金利を11%に据え置き
(パキスタン)
カラチ発
2025年09月30日
パキスタン中央銀行(SBP)は9月15日、金融政策決定会合(MPC)を開催し、政策金利(レポレート)を前月から変わらず11.0%に据え置くと発表した。2024年には最高38%に至ったインフレ率だが、政府の緊縮財政により2025年に入り落ち着きを見せ、直近3カ月のインフレ率(前年同月比)は、6月3.2%、7月4.1%、8月3.0%と低水準で推移していた。
SBPは5月のMPCで、政策金利の12.0%から11.0%への引き下げを決定して以降、5カ月間連続して11.0%を維持している。MPCはインフレ率から乖離して政策金利を高く設定している要因として、食品・エネルギー価格の変動を除くコアインフレの低下傾向が鈍化していること、本年6月以降の洪水の影響で今後予想される農作物供給の落ち込みとこれに起因した食品インフレの不確実性、世界的なエネルギー価格の予期せぬ調整などを挙げている。
他方、MPCは政策金利を高止まりさせる要因の1つとして洪水の影響をあげている一方で、過去の洪水災害時に比べ、現在の経済基盤は負の影響に耐えるだけの強固さがあるとした。昨今の低いインフレ率、緩やかに成長する国内需要、比較的穏やかな世界的な商品価格の見通しから、過去の洪水災害後に見られたような過剰なインフレ圧力や外国為替取引の懸念は、今回は抑制されるだろうと予測している。
パキスタンでは過去、2022年7月にモンスーン降雨による大規模な洪水がパンジャブ州やシンド州で発生し、農作物、特に綿花の供給に甚大な被害をもたらした(2022年8月30日記事参照)。この時には、耕作地が被害を受けたほか、道路の冠水などで物流網に混乱をきたし、従前からのインフレ傾向に輪をかけて食料価格などが高騰し、インフレ率は24.9%まで高進した。
MPCは、経済活動の回復に伴う輸入増加や海外送金の弱含みなどがある中で、中銀の外貨準備高は143億ドル前後(輸入月額債務の約2.4~3カ月分)と安定して推移していることや、米国による輸入関税改定の発表により、世界貿易の不確実性が若干緩和されたことなどポジティブな要因をあげ、「物価上昇率の短期的な変動はあり得るものの、中期的な目標インフレ率5~7%内で物価を安定させるために、政策金利を11.0%で据え置いたことは妥当な判断」としている。
(糸長真知)
(パキスタン)
ビジネス短信 58ae52873322b124