中古車の商業輸入が開始、個人輸入特例スキームは継続

(パキスタン)

カラチ発

2025年10月06日

パキスタン商業省は9月30日、車齢5年までの中古車の商業輸入を認めると発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)し、10月1日から適用された。

この施策は2026年6月30日まで継続され、それ以降は輸入中古車の車齢制限を撤廃する可能性もあるとしている。ただし、当面の激変緩和策として、商業輸入される中古車両は40%の調整関税が課されるほか、国が定める環境、安全および品質基準を満たし、検査・認証要件に準拠している必要がある。40%の調整関税は段階的に低減され、最終的に0%となる。

IMFは融資プログラム(2024年9月30日記事参照)を継続するにあたり、2025/2026年度(2025年7月~2026年6月)の国家予算が2025年7月に発表される以前から、パキスタン政府に対して自動車分野の関税合理化、貿易の自由化を進めるよう求めてきた。この要求を背景に、連邦歳入庁(FBR)は輸入増加による歳入増を目的に、商業輸入開始を強く推進していた。

パキスタン政府はこれまで、中古車の商業輸入は原則として禁止しており、唯一の輸入手段としてパキスタン人が個人レベルで輸入できる3種類の特例スキーム(注)を認めてきた。今回の商業輸入とは別に、特例スキームも継続される。政府は過去、中古輸入車数の推移を見ながら、これら特例スキームによる輸入中古車の車齢制限を3年から5年の間で繰り返し変更してきた。パキスタンに生産拠点を設ける日本の主要な自動車メーカーは、その都度、大きな影響を受けてきた。

パキスタン自動車工業会(PAMA)やパキスタン自動車部品・アクセサリー製造業者協会(PAAPAM)は、今回の商業輸入の開始は国内の自動車・部品産業に壊滅的な打撃を与えるとして強く反対している。2024年1年間でパキスタンに輸入された中古車数は約4万台、このうち92%が日本車となっている。パキスタンは日本と同じ右ハンドルで、排ガス規制レベルが日本より低位であるため、日本の中古車が普及しやすい状況にある。

自動車部品業界関係者によると、「政府は、自動車市場の実態を見ながら、今後施策の見直しを図る可能性もある」という。国内自動車産業の声や雇用に与える影響、輸入関税による歳入増、IMFが求める融資条件など、さまざまな観点がある中、政府がどのような方向性を打ち出すのか注目される。

(注)在外パキスタン人が2年に一度、パキスタン国内にいる家族向けに中古車を送ることができる「ギフトスキーム」のほか、「パーソナルバゲッジスキーム」「トランスファーオブレジデンススキーム」がある。現在、これらのスキームでは、輸入できる乗用車の車齢は3年、トラックやバンなど商用車の車齢は5年までと決まっている。

(糸長真知)

(パキスタン)

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