2025年度ドイツ連邦予算が成立、成長重視の財政政策に転換
(ドイツ)
ベルリン発
2025年10月22日
ドイツ連邦議会は9月18日、2025年度(暦年)連邦予算を可決し、連邦参議院も9月26日に承認した。歳出総額は5,025億5,000万ユーロ(2024年度予算比257億4,000万ユーロ増)で、うち投資額(注1)は627億3,000万ユーロ。特別基金を含めた投資総額は過去最高水準となり、前年度比55%増の約1,150億ユーロ。歳入も税収など3,868億4,000万ユーロ(同122億9,000万ユーロ増)、純借入額(注2)817億8,000万ユーロ(同427億5,000万ユーロ増)となり、大幅な増額になっている。
2024年11月の前政権崩壊(2024年11月8日記事参照)と2025年2月の総選挙(2025年2月26日記事参照)を経て、同年5月に発足したキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)による連立政権(2025年5月13日記事参照)は、予算成立までの間、暫定予算で政府運営を行っていた。
CDU/CSUとSPDは連立交渉中の2025年3月に基本法(憲法に相当)を改正し、防衛費やインフラ投資を債務ブレーキ(注3)の枠外とする規定を設けた(2025年3月24日記事参照)。これにより大規模な財政出動が可能となり、6月には2025年度予算案と2026~2029年の中期財政計画を閣議決定し、従来の緊縮路線から成長と近代化を重視する積極投資路線への転換を打ち出した。ラース・クリングバイル財務相は2025年度連邦予算が可決された9月18日、「今回の予算はドイツ財政政策のパラダイムシフトだ」と強調した。
防衛費は約624億3,000万ユーロで、特別基金を含めると防衛関連歳出は860億ユーロ超となり、過去最高水準だ。フリードリヒ・メルツ首相は、欧州の自由と平和に対するドイツの責任を強調。防衛力を強化するとともに、現在の社会保障システムの維持には経済成長が不可欠である旨を述べた(注4)。なお、政府は2026年度予算案として歳出総額5,205億ユーロ、投資額約1,267億ユーロとする過去最大規模の計画を提示済み。政府試算では、2026年の防衛関連歳出は2024年のGDP比で約2.5%に達する。
成長と安全保障の両立を図る今回の予算は、ドイツの財政運営における新たな一歩となる。
(注1)将来の価値創出に資する支出を指し、建設事業(軍事施設を除く)、動産・不動産の取得、企業への出資・資本増強・証券取得、融資・保証履行、これら目的のための補助金・交付金を含む。
(注2)国債などの新規借入額から償還額を差し引いた純額であり、当該年度における純粋な債務増加分を示す。
(注3)連邦政府の債務をGDPの最大0.35%に抑えるという財政規律ルール。
(注4)ドイツはNATOの合意に基づき、2035年までに防衛関連支出を段階的にGDP比5%に引き上げる方針を掲げている。
(中山裕貴)
(ドイツ)
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