ドイツ新政権が発足、経済相と新設のデジタル相には民間出身者を登用

(ドイツ)

ベルリン発

2025年05月13日

ドイツ連邦議会(下院)で5月6日、首相が選出され(2025年5月8日記事参照)、同時にキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)による新政権が発足した。連立協定(2025年4月11日記事参照)のとおり、CDUは7(首相府長官は除く)、CSUは3、SPDは7の閣僚ポストを得た(添付資料表参照)。新内閣では首相、外務相、経済・エネルギー相が同じCDU出身であることから(注)、ウクライナ紛争や米国関税措置への対応が求められる外交や、3年連続のゼロ成長危機に直面し国内経済の立て直しが急務な経済政策において、一貫した政策展開が期待される。

政権交代に伴う省庁再編により、経済・気候保護省は経済・エネルギー省と名称変更され、自然・気候保護部門、デジタル部門、技術部門などが別の省に移されることから、規模が縮小される。エネルギー供給企業の役員から経済・エネルギー相に抜擢(ばってき)されたカテリナ・ライヒェ氏には、エネルギー価格の引き下げなどが期待されている。

また、今次政権においてはデジタル・交通省が、デジタル化・国家近代化省と交通省に分けられた。5月6日に発表された組織指令によると、デジタル化・国家近代化省は経済・エネルギー省のみならず、首相府、内務省、交通省、財務相、司法・消費者保護省から一部の所掌権限が委譲され、さらに、国防や安全保障・警察業務といった一部の例外を除いて、連邦政府の直接的なIT支出に関する権限を得た。電子機器小売りチェーンなどを傘下にもつ国際的な小売企業セコノミーの会長だったカーステン・ウィルトベルガー氏がデジタル化・国家近代化相に就任した。報道によると、同社でデジタル化に取り組んだことが評価されたという。ドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会(BITKOM)のラルフ・ウィンターゲルスト会長は、デジタル化・国家近代化省の新設はドイツのデジタル化の推進力となり得る画期的な出来事だとして、歓迎している。

国防相は、SPDのボリス・ピストリウス氏が続投する。SPD出身閣僚で前政権からの留任は同氏のみだ。報道によると、調達業務の加速、徴兵制の活用を含む人材採用の根本的な再編成、そして「総合防衛」概念を省庁横断的に実施することの3点が主要任務だという。国防相を続投することから、迅速な対応が期待されている(現地主要紙「フランクフルター・アルゲマイネ」5月7日)

(注)CDUが外務相ポストを得るのは60年ぶりとされている。

(打越花子)

(ドイツ)

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