AfCFTAは交渉進展も、各国の産業多角化が必須
(アフリカ、南アフリカ共和国、エジプト、タンザニア、チュニジア、ガーナ、ケニア、ルワンダ、ナイジェリア、カメルーン、アンゴラ)
ナイロビ発
2025年10月24日
南アフリカ共和国の通商シンクタンク、トララック(Tralac)は10月3日、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の進展についてウェビナーで解説した(AGOA失効と相互関税については2025年10月24日記事参照)。
AfCFTAは2019年に運用開始を宣言したが、関税譲許表や原産地規則の一部が交渉中で本格運用に至っていない。物品貿易については、92.4%の品目で原産地規則について合意したが、残る7.6%の自動車と繊維製品で交渉中だ。ステレンボッシュ大学のヘラルド・エラスムス名誉教授は「残る項目は少ないが、そのラストマイルこそが問題」「地域経済共同体(REC)と同じ原産地規則にしようにも、南部アフリカ開発共同体(SADC)の繊維製品の原産地規則は製品ごとだが、他のRECはそうではないなど、肝心な部分が異なる」と指摘した。
また、非センシティブ品目(A)、センシティブ品目(B)、除外品目(C)が定められている(注1)が、すべての関税譲許表を提出したのは16カ国(注2)だ。暫定的な関税譲許表を公文化しているのは25カ国(注3)で、2022年10月に特定の品目と国だけで開始された試験プログラム(2022年10月7日記事参照)は役割を終え、現在は25カ国で暫定的な関税譲許表に基づく貿易が理論上可能だ。
2025年6月末時点のAfCFTAに基づく原産地証明書の発給数は、経済規模が大きく多角化の進んだ南ア(4,658件)とエジプト(2,852件)が圧倒的で(注4)、エラスムス名誉教授は「多くの国が同じものを作り競争している。AfCFTAの本来の主旨を考えれば各国の産業多角化が必要」と指摘した。
RECについて、AfCFTAを法制化している4つ(注5)は引き続き機能し続ける。例えば、南アがSADC加盟国間で貿易する場合、基本的にはSADCの自由貿易協定(FTA)ルールが適用されるが、ザンビアとジンバブエのように両国が東南部アフリカ市場共同体(COMESA)とSADCに属する場合、輸出入者による選択が可能で、AfCFTAは選択肢の1つとして追加される。2025年5月にはアンゴラがSADCのFTAに参加したことも紹介され、RECも少しずつ進展している。
サービス貿易については、金融や通信は進展、運輸、観光も交渉が進んでいるが、分野が多く、時間がかかる見込みだ。主に人の移動に伴う資格の相互認証などで交渉中だ。
(注1)全体の90%程度を占める非センシティブ品目(A)の関税は即時撤廃、7%のセンシティブ品目(B)は10年間で関税削減と定められ、3%が除外品目。後発開発途上国(LDC)はAを10年間、Bを13年間で撤廃。
(注2)アルジェリア、チュニジア、エジプト、エチオピア、セーシェル、マダガスカル、モーリシャス、マラウイ、アンゴラ、コンゴ民主共和国、カメルーン、チャド、中央アフリカ、ガボン、コンゴ共和国、赤道ギニア。Aのみ提出した国を含めると32ヵ国で、5カ国は何も提出していない。
(注3)アルジェリア、チュニジア、モロッコ、エジプト、ガーナ、ナイジェリア、カメルーン、コンゴ共和国、エチオピア、南スーダン、ウガンダ、ケニア、ルワンダ、ブルンジ、セーシェル、タンザニア、マラウイ、ザンビア、モザンビーク、モーリシャス、ナミビア、ボツワナ、エスワティニ、レソト、南ア
(注4)そのほか、タンザニア392件、チュニジア300件、ガーナ201件、ケニア112件、ルワンダ29件、ナイジェリア10件、カメルーン7件。
(注5)SADC、COMESA、東アフリカ共同体(EAC)、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)。
(佐藤丈治)
(アフリカ、南アフリカ共和国、エジプト、タンザニア、チュニジア、ガーナ、ケニア、ルワンダ、ナイジェリア、カメルーン、アンゴラ)
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