国連気候サミットを国連とブラジル大統領が主催、中国はGHG排出削減目標を発表
(ブラジル、米国、中国)
調査部米州課
2025年10月06日
米国ニューヨークの国連本部で9月24日、気候サミット(Climate Summit)が開催された。ブラジル北部パラ州の州都ベレン市で11月10日から21日にかけて開催される国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)に向け、国連のアントニオ・グテーレス事務総長とブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領が主催した。
同サミットでは、パリ協定の締約国約100カ国(うち約40カ国の国家元首・政府首脳を含む)が新たな気候目標の策定や実施へのコミットメントを表明した。パリ協定の締約国は、同協定に基づいて5年ごとに温室効果ガス(GHG)排出削減目標(NDC、注1)を報告することが義務付けられている。ただ、2035年までのNDCは、従来の提出期限の2025年2月10日を過ぎても195カ国中13カ国からしか提出されていなかった(注2)。
そうした中、今回の気候サミットでは、中国やナイジェリアといった主要経済大国がNDCを発表した。ビデオ演説を行った中国の習近平国家主席は、GHG排出量について、2035年時点でピーク時点比7~10%削減すると発表した。国連によると、中国は最大のGHG排出国だ。習国家主席はそのほかにも、中国が非化石燃料の割合を総エネルギー消費の30%以上に引き上げることや、風力・太陽光発電の設備容量を2020年比で6倍に拡大すべく、電気自動車(EV)を含む新エネルギー車を新車販売の主流にすることなどを挙げた。
ブラジル現地紙「ノティシアス・アンビエンタイス」(10月2日付)は、中国のNDCについて「野心的な目標ではないものの、約束を提示することが重要」と一定の評価を示した。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は「中国の目標は確実に達成できる範囲に設定されており、より野心的な目標を期待していた国際社会には物足りないもの」と評している(10月2日付公式サイト)。また、「こうした具体的な数値目標は、地方政府や国有企業、民間投資家にとって経済政策の指針となる」と、中国国内政策への影響を分析した。
(注1)NDCは、Nationally Determined Contributionの略。パリ協定締約国はNDCとして気候変動対策を実施しなかった場合のBAU(Business As Usual)シナリオと比べてのGHG削減目標を設定する。
(注2)4月23日にグテーレス事務総長とルーラ大統領が主催した「気候野心サミット(Climate Ambition Summit)」では、NDCの提出期限を当初の2月から9月に延長することで合意した(2025年4月24日記事参照)。
(辻本希世)
(ブラジル、米国、中国)
ビジネス短信 533691a5f81755bc