マレーシアと韓国、FTA交渉で妥結、能力開発に期待
(マレーシア、韓国)
クアラルンプール発
2025年10月29日
マレーシア投資貿易産業省(MITI)と韓国産業通商資源部は10月27日、第47回ASEAN首脳会合とその関連会議が行われたクアラルンプールで、マレーシア・韓国自由貿易協定(MKFTA)の交渉妥結を発表した(マレーシア側発表
、韓国側発表
)。両国は2024年3月にそれまで4年半停滞していた交渉を再開し、約1年半で合意に至った(2024年4月22日記事参照)。
マレーシアは足元で貿易多角化を加速させており、2025年に入ってからアラブ首長国連邦(UAE)との協定が発効し(2025年10月3日記事参照)、欧州自由貿易連合(EFTA)と署名した(合意については2025年4月14日記事参照、その後6月23日に署名)。湾岸協力会議(GCC)とも交渉を開始している(2025年5月28日記事参照)。
今回のMKFTAは、マレーシアとしては19番目のFTAに当たる。韓国はマレーシアにとって8番目の貿易相手国で、貿易総額は240億ドル(2024年時点、なお、日本は第5位)。マレーシアからの主要輸出品は、電子・電気製品、液化天然ガス(LNG)、石油製品、金属製品、光学・科学機器などだ。また、1980年以降、韓国はマレーシアに累計619億リンギ(約2兆2,284億円、1リンギ=約36円)を投資し、8万3,000人以上の雇用機会を創出した。
MKFTAは、物品、サービス、投資、貿易円滑化、動植物検疫、デジタル貿易、グリーンエコノミー、バイオエコノミー、経済協力など幅広い分野を網羅している。韓国への市場アクセス改善について、マレーシアにとっての戦略的品目の食品・農業分野、ハーブ製品・抽出物、パーム油・カカオ製品などの一次産品や、化学・石油化学製品、熱帯木材・合板などの関税が撤廃される。
ザフルル・アジズ投資貿易相は「2国間貿易の規模の大きさを踏まえると、韓国とのFTAは時宜を得たものだ。産業開発、貿易、投資の分野で緊密な協力関係を築く機会は数多い」と説明した。マレーシアにとっては特に経済協力と能力構築に関する章に基づき、産業別能力開発の強化や人材育成に際して、韓国のベストプラクティスを学びたいとの期待を示した。
MITIはまた、MKFTA交渉の妥結は世界経済の不確実性の中で輸出市場多様化を下支えるとともに、WTOルールをより所とした多国間貿易体制への揺るぎないコミットメントを強化する枠組みと説明した。FTAに加え、両国はサプライチェーンの戦略的協力に関する覚書(MOU)も締結し、サプライチェーン強靭(きょうじん)化を含む経済安全保障面での連携強化を確認した。
(吾郷伊都子)
(マレーシア、韓国)
ビジネス短信 6d3b091141ae9886




閉じる
