マレーシア、GCCとのFTA交渉開始、1年以内の妥結を視野に

(マレーシア、湾岸協力会議(GCC))

クアラルンプール発

2025年05月28日

マレーシア投資貿易産業省(MITI)は5月26日、中東6カ国で構成する湾岸協力会議(GCC)と自由貿易協定(FTA)交渉を正式に開始したと発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。交渉開始を宣言する共同声明には、ザフルル・アジズ投資貿易産業相と、ジャセム・モハメド・アール・ブダイウィGCC事務総長が署名し、アンワル・イブラヒム首相とクウェート皇太子が立ち会った。MITIはFTA交渉開始について、「歴史的な一歩」「両者間の包括的かつ互恵的なパートナーシップの構築に向けた強い決意の表れ」と表現した。GCCの一員のアラブ首長国連邦(UAE)との関係では、マレーシアは2025年1月に包括的経済連携協定(CEPA)に署名し(2025年1月16日記事参照)、MITIはこれを皮切りにGCCとのFTA締結を追求する考えを示していた。

FTA締結に関する両者の取り組みは、2011年1月に署名した経済、商業、投資、技術の協力に関する枠組み協定(FAECITC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにさかのぼる。その後、翌2月にはFTA締結について協議を進めることで合意し、GCCによるFTA研究が終了次第、協議を完了する予定だったが、事実上10年以上具体的な動きがなかった(ジェトロ「世界のFTAデータベース」)。

MITIのプレスリリースによると、マレーシアとGCC間の貿易額は2024年に223億ドルに上った。ジェトロの調べでは、マレーシアの貿易総額に占めるGCCの比率は3.5%で、マレーシアの主な輸出品は電気・電子製品、宝飾品、石油製品、パーム油および関連製品、加工食品などとなっている。FTAでは物品貿易のみならず、サービス貿易、投資、貿易円滑化、広範な経済協力など、幅広い分野を網羅する見込みだ。

ザフルル氏はGCCを「西アジアで最も重要な貿易相手の1つ」とし、今回のFTAを単なる貿易協定ではなく、相互関係を再構築・強化するための戦略的プラットフォームと位置付けている。多くの不確実性に見舞われる世界で、両者間の協力を強化し、包摂的で共通の繁栄をともに実現すべく、1年以内に交渉をまとめたい意向を示した。5月25日付の国営ベルナマ通信によると、ザフルル氏はまた、半導体や電気・電子製品、石油化学など、幾つかの有望分野を交渉で特定したと明らかにした。ハラール経済やデジタル経済、再生可能エネルギー、人工知能(AI)といった新興産業も、両者で協力を模索する対象になり得ると述べた。

(吾郷伊都子)

(マレーシア、湾岸協力会議(GCC))

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