メキシコ政府、米国の追加関税率引き上げはさらに数週間延期と発表

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2025年10月31日

メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は10月27日の早朝記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、米国のメキシコに対する30%の追加関税賦課が90日間延期されていたこと(2025年8月1日記事参照)について、10月25日に米国のドナルド・トランプ大統領との電話会談を行い、数週間後に再び話し合うことで合意したと発表した。現時点で、再協議の明確な日程は明らかにされていない。

今回の電話会談は、トランプ大統領の外遊のため非常に短い時間での会談だったとし、シェインバウム大統領は「両国の対策グループが連絡を取り合いながら、引き続き協議し、現在検討中の項目について協議完了次第すぐに電話会談を行うことに合意した。11月1日に特別な関税が賦課されることはない」と説明。11月1日からの関税引き上げが行われないことを示唆した。また、今回の協議事項は通商問題であり、移民や安全保障の問題は協議していないとした。

電話会談で数週間の猶予が与えられた理由として、シェインバウム大統領は「54の非関税障壁の問題を解決するためだ」と説明した。54の非関税障壁の具体的な内容に関して言及はなかったものの、有力と考えられるのは、米国通商代表部(USTR)が公表した2025年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」の内容だ(2025年4月3日記事参照)。NTEの中でUSTRは、メキシコの通関制度(注)、医薬品・医療機器の衛生登録や輸入許可の遅延、知的財産保護に関する法規制の欠如、石油公社(PEMEX)や電力庁(CFE)を優遇したエネルギー政策など、多岐にわたる項目を非関税障壁として指摘していた。今後は追加関税の行方だけでなく、メキシコ政府が非関税障壁の問題に対してどのような対策を講じるかも注目される。

(注)NTEの中で、USTRはメキシコにおける通関制度の変更について、事前通知が不十分で、税関ごとに規制要件の解釈が不統一と指摘。また、新たな関税や税務要件の通知が発効の2週間前かそれより短い期間で行われることが多く、米国の輸出業者がシステムの調整や変更を行う時間がないなど、メキシコの通関制度への対応が困難なことを指摘している。

(阿部眞弘)

(メキシコ、米国)

ビジネス短信 6a2ead2191698990