メキシコ政府、追加関税率上昇の90日間延期を米国と合意
(メキシコ、米国)
メキシコ発
2025年08月01日
メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は7月31日の記者会見で、メキシコに対する米国の30%の追加関税賦課(2025年7月14日記事参照)について、90日間の延期で米国と合意したと発表した。現在賦課されている米国の国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づくメキシコ製品に対する25%の追加関税、1962年通商拡大法232条に基づく自動車・自動車部品への25%、鉄鋼・アルミニウムへの50%の追加関税については、依然として維持されるとした。米国のドナルド・トランプ大統領と40分の電話会談が行われ、メキシコ側からは、シェインバウム大統領、マルセロ・エブラル経済相、フアン・ラモン・デ・ラ・フエンテ外相、ロベルト・ベラスコ外務省北米担当次官が参加した。
シェインバウム大統領は合意の重要な要素として、「第1に追加関税のさらなる引き上げはないこと。第2に米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が維持され、(IEEPAに基づく追加関税や自動車部品に対する232条追加関税に関しては)USMCA原産品であれば関税が適用されないこと。第3に米国との交渉を維持できたこと」を挙げた。その上で「新たな世界貿易秩序の中で、メキシコは他国よりも良い条件で米国と合意を締結している。メキシコへの投資は依然として最良の選択肢だ」と強調した。さらに、USMCA原産品でも追加関税が賦課される自動車、鉄・アルミ、トマト(注1)などに関しても、「90日の延長期間も引き続き協議していく」とした。
非関税障壁については、USMCAの枠組みの中で米通商代表部(USTR)と、双方の懸念や課題について協議していると発言した。エブラル経済相は「議題としては、労働に関するメカニズム(注)の問題や、知的財産に関する問題などがある」とし、特許審査の遅れによる医薬品のジェネリック化の遅延に関する問題を例に挙げた。
USMCAの見直し時期にも言及
エブラル経済相は同じ記者会見で、関税交渉の次のステップとしてUSMCA見直しにも言及した。「協定の見直しは2026年1月から開始されるが、その前に取り組むべき課題(追加関税交渉)がある」と述べ、まずは目の前の関税交渉に取り組んでいく姿勢を示した。一方で、同日に開催された経済省主催のピッチイベントでは、「当初2025年1月時点の目標は、年末に協定の見直しを行うことだったが、11月に見直しが始まるだろう。メキシコにとってはとても大きな進歩だ」とも発言しており、USMCAの見直しは2025年末から2026年明けにかけて開始するとみられる(「レフォルマ」紙7月31日付)。
(注1)トマトについては、米政府が7月14日にメキシコ産トマトに対するアンチダンピング(AD)停止協定からの離脱を発表していた(2025年7月16日記事参照)。
(注2)USMCAで定めている「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に関連すると推測されるが、詳細は不明。
(阿部眞弘)
(メキシコ、米国)
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