英国、技能労働者ビザの「一時的不足職種リスト」を見直し
(英国)
ロンドン発
2025年10月15日
英国の移民助言委員会(MAC)は10月9日、「一時的不足職種リスト(Temporary Shortage List:TSL)」に関する第1段階(Stage1)となる報告書を公表した。キア・スターマー首相が5月に移民制度の厳格化策の一環として、技能労働者ビザ(Skilled Worker visa)の職務レベル要件について、現行の高卒(レベル3)から学卒(レベル6)へ引き上げる方針を発表し、職務レベル3から5の職業については、政府が定めるTSLに掲載した職業に限り、ビザ申請を認める方針を示していた(2025年5月13日記事参照)。また、7月に公表したTSLに掲載の職種は2026年末まで有効で、それ以降はMACの提言に基づいて更新するとしていた(2025年7月4日記事参照)。
今回の報告書では、検討対象となる中技能職(職務レベル3から5)151職種のうち、82職種を重要職業として次の第2段階の検討対象に選定したと報告した。同報告書は7月2日に内務相から同委員会への提言要請を受けて作成されたもので、英国の産業戦略(2025年6月25日記事参照)や重要セクターの実現に不可欠な職業を踏まえ、TSLに含めるべき職種を示している。提言の主な内容は次のとおり。
- TSLは、優先セクターで重要な特定職種の人材不足解消を支援するため、限定的かつ期限付き移民ルートとして機能すべきだ。
- リストへの職種追加の標準期間は3年とし、必要に応じて当初はより短期間での追加を推奨する。
- ビザの有効期限は3~5年が適切で、5年を超える更新は推奨しない。
- 英語能力要件は欧州言語共通参照枠(CEFR)のB1レベル以上とすることを推奨する。
82職種には、科学技術者、工学技術者、電気・電子技術者、IT技術者、空調・冷凍設備の設置・修理工、自動車整備士、建設・建築関連職、法務関連専門職、芸術家など多様な職種が含まれる。
第2段階(Stage2)では、対象職種について定量データ分析を行い、労働力不足の実態や要因を検証する予定だ。2026年7月に完了し、TSLに含めるべき職種について、同委員会から内務相へ提言が行われる見通しだ。
(野崎麻由美)
(英国)
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