スターマー英首相、移民制度の厳格化に向けた白書発表
(英国)
ロンドン発
2025年05月13日
英国のキア・スターマー首相は5月12日、移民制度の厳格化に向けた白書を発表した。国境管理の強化を打ち出し、単に移民数の削減を目指すのではなく、国益に資する移民の受け入れを行うとした。
白書で示された労働者および学生関連の主な制度改革の方針は次のとおり(各ビザの概要についてはジェトロ・ウェブサイト参照)。
- 技能労働者ビザ(Skilled Worker visa)の職務レベル要件について、現行の高卒(レベル3)から学卒(レベル6)へ引き上げ。年収要件も引き上げる。職務レベル3から5の職業については、一時不足リスト(Temporary Shortage List)に掲載されたもののみ、ビザ申請を認める。ただし、厳格な条件を設定。
- 技能労働者ビザまたは企業内転勤向けのシニアまたはスペシャリストワーカービザ(Senior or Specialist Worker visa)を申請する際に、企業が負担する移民技能負担金(Immigration skills charge)を32%増額(注)。
- 外国人労働者の採用水準が高い主要産業については、労働力計画(Workforce Strategy)を策定することを要求。
- 英国の国内人材への投資を雇用主に促すような施策を検討。
- 非常に高い技能を持つ外国人材に対するビザを拡大。グローバルタレントビザ(Global Talent visa)やイノベ-ター創設者ビザ(Innovator Founder visa)、ハイポテンシャル・インディビジュアルビザ〔High Potential Individual(HPI)visa〕を強化。
- 英国高等教育機関卒業生ビザ(Graduate visa)で滞在可能な期間を18カ月に短縮。現行は、学士号、修士号を保持する場合は2年、博士号を保持する場合は3年。
- 高等教育機関が外国人学生から得る所得に対し、賦課金を導入することを検討。賦課金による歳入は教育および人材育成にかかる投資として活用。
- 技能労働者ビザの英語力要件につき、現行の欧州言語共通参照枠(CEFR)のB1レベルからB2レベルに引き上げ。外国人労働者および外国人学生の成人配偶者(Dependant)に対してはCEFRのA1レベル、ビザ延長の申請者に対してはA2レベル、永住権の申請者に対してはB2レベルを、それぞれ求める。
- 永住権および市民権に関する制度を改革。ポイントベースのシステムを拡大し、申請資格の獲得に必要な在留年数を5年から10年に延長。英国の経済・社会への貢献が見込まれる場合は、必要な在留年数を短縮。
(注)現行は、小規模企業の場合年間364ポンド(約7万980円、1ポンド=約195円)、大企業の場合同1,000ポンド。申請年数に応じて、支払額は変化(詳細は英国政府ウェブサイト参照)。
(山田恭之)
(英国)
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