トランプ米政権、バイデン前政権が導入した銃器輸出規制を撤廃、米企業の輸出機会創出を強調
(米国)
ニューヨーク発
2025年10月02日
米国のトランプ政権は9月29日、バイデン政権時代の2024年に導入した非軍事用の銃器、弾薬、関連部品に関する輸出規制を撤廃すると発表した。商務省産業安全保障局(BIS)が翌30日に連邦官報で最終規則(FR)
を公示し、同規制は同日に正式に撤廃された。
バイデン前政権は2024年4月に、米国の国家安全保障や外交政策に反するかたちで転用や悪用される重大なリスクがあると判断した「高リスク国」36カ国への非軍事用の銃器などの輸出許可申請を原則不許可とすることなどを規定した暫定最終規則(IFR)を発表し、同年5月に施行していた(2024年5月1日記事参照)。
今回、BISはこの2024年のIFRを撤廃した。ただし、同IFRで新設した輸出管理分類番号(ECCN)の0A506(半自動式ライフル)、0A507(半自動式ピストル)、0A508(半自動式ショットガン)、0A509(これらの部品など)は規制を維持する。これらを含めた銃器、弾薬、関連部品・技術(ECCN:0x5zz、注)の輸出などに当たり、仕向け国、エンドユース(最終用途)、エンドユーザー(最終使用者)に応じて、BISがライセンス申請を審査する仕組み自体には変更がない。
BISは発表で、2024年のIFRは米国の国家安全保障に寄与しないまま、海外市場を外国の銃器メーカーに譲り渡すものだったと説明し、撤廃によって米国の銃器メーカーが海外市場で競争可能となり、年間数億ドル規模の輸出機会が生まれるとして、意義を説明した。ジェフリー・ケスラー商務次官(産業安全保障担当)も「BISはバイデン前政権による(銃を保有・携帯する国民の権利を保障する)合衆国憲法修正第2条および銃器の合法的な使用者への攻撃を強く拒否する。本日の規則により、BISは輸出管理に常識を取り戻し、米国が誇る銃器産業に正当な評価を与えるとともに、国家安全保障の確保を継続する」と主張した。
トランプ政権は2025年5月には、バイデン前政権が策定した人工知能(AI)半導体の輸出管理に関する「AI拡散規則」を撤廃する意向を発表しており(2025年9月29日記事参照)、この時も「企業のビジネスを阻害するような過度な規則を改正すべき」との立場を示していた。トランプ政権の輸出管理の政策動向については、ジェトロの8月6日付地域・分析レポート(前編/後編)を参照。
(注)5桁のECCNで1桁目に「0」、かつ3桁目に「5」が割り当てられた品目。2桁目と4~6桁目には品目によって異なる記号や数字が割り当てられる。これらは米国の輸出管理の対象品目を定めたリストのうち、軍事用途の規制品目リスト(USML)からデュアルユース(軍民両用)の規制品目リスト(CCL)に移管された一般市民用、娯楽用、法執行用、またはそれ以外の非軍事用の銃器、弾薬、関連部品・技術。具体的には、0A501、0A502、0A504、0A505、0A506、0A507、0A508、0A509、0B501、0B505、0D501、0D505、0E501、0E504、0E505。
(葛西泰介)
(米国)
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