S&P、「CCC+」や「ポジティブ」などのソブリン格付けをラオスに付与

(ラオス)

ビエンチャン発

2025年10月27日

米国の大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ・グローバル(S&P)は10月23日、ラオスに対して初めてソブリン信用格付け(注1)を付与した。長期発行体格付けは「CCC+」、短期発行体格付けは「C」とし、見通しは「ポジティブ」とした(注2)。これは、ラオスの経済・財政状況の一定の改善がみられることを反映したものだ。

同レポートによると、ラオスはGDP比で約90%に相当する高水準の純債務残高を抱えているものの、財政均衡の達成、経常収支の黒字化、外貨準備高の増加、インフレ抑制などで改善の兆しが見られるという。「ポジティブ」は、今後12カ月間に財政・経常収支の黒字が継続することで、外貨準備の積み増しや流動性の強化につながり、外貨建て債務の返済能力を支えるとともに、インフレ率の低下や為替相場の安定にも寄与する可能性を示唆している。

さらに、同レポートでは、過去3年間にわたる財政基盤の強化が高く評価され、対外ポジションも徐々に改善していると指摘した。今後も、債務残高比率の縮小に向けた取り組みが続く見通しだ。一方で、マクロ経済・財政・対外収支の困難な局面を脱しつつあるものの、債務の持続可能性を完全に回復するには、さらなる改善が必要だとしている。

また、ラオス政府の長期公的対外債務の元利返済負担は、2025年に18億ドル、2026~2028年には平均12億ドルに達すると見込まれる。政府は、一部の長期外貨建て債務を短期の商業銀行借り入れに借り換える可能性があり、その場合、年間の債務返済負担が増加するリスクがあると指摘した。

S&Pは、パンデミック後の経済回復に取り組む中、今後2~3年にわたって良好な経済指標を維持できるかが、債務の持続可能性を確保する鍵になると分析している。

(注1)ソブリン格付けとは、国が発行する債券(国債)の債務返済能力や信用力などを評価した格付けのこと。国際金融市場での信頼度や資金調達コストに大きな影響を与える指標となる。ラオスはこれまで、ムーディーズは「Caa3(2022年6月22日記事参照)」、フィッチは格付けを取り下げ(2022年9月7日記事参照)、トリスは「BB+(2023年10月25日記事参照)」としている。

(注2)S&Pによる各種格付けと見通しの定義は、次のとおり。

  • 長期発行体格付けの「CCC」は脆弱(ぜいじゃく)であることを示し、債務履行が良好な事業環境、金融情勢、経済状況に依存し、投機的とされる区分。+は各カテゴリー内で相対的に強いことを示す。
  • 短期発行体格付けの「C」は債務を履行せず、その下の格付け(SD、D)に至る蓋然(がいぜん)性が高く、債務履行は良好な事業環境、金融情勢、経済状況に依存するとされる区分。
  • 見通しは、今後1~2年の長期格付けの方向性を示す。「ポジティブ」は引き上げの余地あり、「ネガティブ」は引き下げの余地あり、「安定的」は変更の可能性が低い。

(山田健一郎)

(ラオス)

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