アゼルバイジャン、アルメニア向け輸送規制を解除
(アゼルバイジャン、アルメニア)
調査部欧州課
2025年10月24日
アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領は10月21日、カザフスタン訪問中に発表した記者向け声明の中で、アゼルバイジャン経由のアルメニア向け貨物輸送規制を解除したことを明らかにした。最初の貨物として、カザフスタン産の穀物がアゼルバイジャンを経由してアルメニアに運ばれるという。
アリエフ大統領は声明で「アゼルバイジャンとアルメニアの間の平和は、もはや紙の上のものではなく、既に実践されていることを示す良い兆しだ」と評価した。1988年にアゼルバイジャン領内でアルメニア系住民が多く住んでいたナゴルノ・カラバフ自治州を巡り、両国間の紛争が表面化し、その後激化したことを受け、1990年代初頭にアゼルバイジャンはアルメニアとの間の貨物輸送を封鎖した。アゼルバイジャンの友好国トルコも同調して、1993年にアルメニアとの国境を封鎖した。このため、アルメニアへの陸路接続はジョージアかイラン経由に限られていた。
アルメニアのナゼリ・バグダサリャン首相報道官が同日に声明を発表し、規制解除について「地域の連結性の開放、相互信頼の強化、アルメニアとアゼルバイジャン間の平和の制度化にとって、非常に重要な意味を持つ。これは、(米国首都)ワシントンで達成された合意に沿ったものだ」と歓迎するとともに、アゼルバイジャンとアルメニア間で8月にドナルド・トランプ米大統領の仲介で署名した和平に関する共同宣言に触れた(2025年8月13日記事参照)(国営通信社「アルメンプレス」10月21日)。
アゼルバイジャンは中央アジア各国などと連携し、カスピ海横断国際輸送ルート(中央回廊)の開発に力を入れている(2025年9月1日記事参照)。アルメニアとの共同宣言で「国際平和と繁栄のためのトランプ・ルート」と名付けられた「ザンゲズル回廊」の開発も、中央回廊の一部として重視する。ザンゲズル回廊はアゼルバイジャン本土からアルメニア領土を通り、アゼルバイジャンの飛び地ナヒチェバン共和国、さらに、トルコにもアクセスが可能になる。アリエフ大統領は21日の声明で、ザンゲズル回廊について「大きな可能性がある」と述べ、ザンゲズル回廊上にあるアゼルバイジャンの道路と鉄道の接続が2026年半ばまでに完了する予定と明らかにした。関係国による整備が迅速に進めば、同回廊は2028年末までに開通する可能性を指摘した。
(浅元薫哉)
(アゼルバイジャン、アルメニア)
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