国務院がレアアース管理条例を発表、産業チェーン全体の管理強化
(中国)
北京発
2024年07月05日
中国国務院は6月29日、レアアース管理条例(国務院令第785号)を発表した。同条例は全32条で、国内のレアアースの採掘、抽出・分離、金属精錬、総合的な利用、流通、輸出入などの活動に対して適用される。条例は10月1日から施行される(注1)。
同条例では、(1)レアアース資源保護の強化、(2)レアアースに対する管理体制の整備、(3)レアアース産業の質の高い発展に向けた取り組み、(4)レアアース産業チェーン全体の管理体系の整備、(5)管理措置と不法行為責任の明確化などについて具体的に定めている。
(1)では、レアアース資源は国が所有するもので、いかなる組織や個人もレアアース資源を横領あるいは破壊してはならないとしたほか、国が法に基づいてレアアース資源の保護と採掘を行うことを明記した。
(3)について、工業情報化部の担当部門は関連部門と連携して、レアアース産業の発展計画を策定・実施するものとした。また、レアアース産業の新技術、新工程、新製品、新材料、新設備の研究開発と活用を奨励・支援するほか、レアアースの採掘、抽出・分離、金属精錬、総合的な利用に携わる企業は、鉱物資源、省エネ・環境保護、クリーン生産や安全生産などに関する法規を順守しなければならないとした。
(4)では、次の5つの面から、具体的な規定を盛り込んでいる。
- 工業情報化部の担当部門が関連部門と連携して、レアアースの採掘と抽出・分離を行う企業を決定し、それ以外の組織や個人が採掘と抽出・分離を行うことを禁止する。
- レアアース資源の埋蔵量・種類、産業発展、生態保護、市場ニーズなどに応じて、レアアースの採掘と抽出・分離に対する総量規制を行い、動態的に管理する。
- レアアースの総合的な利用に携わる企業はレアアース鉱物を原材料とする生産活動を行ってはならない。
- レアアースの採掘、抽出・分離、金属精錬、総合的な利用、レアアース製品(注2)の輸出に携わる企業が製品フローの情報をレアアース製品トレーサビリティーシステムに記録するよう義務付ける(注3)。
- いかなる組織や個人も、違法に採掘、抽出・分離されたレアアース製品を購入、加工、販売、輸出してはならない。
商務部国際貿易経済合作研究院の白明研究員は、同条例はレアアース資源の開発・利用を規範化するための行政立法で、輸出管理に関する規定ではないとした上で、中国がレアアースの輸出を規制するといった外国メディアの懸念は合理的ではないとコメントした(「環球網」7月1日)。
(注1)工業情報化部は2021年1月15日にレアアース管理条例の意見募集稿を公表し、同年2月15日まで募集を行った。これまでのレアアース管理に関する政策概要については、ジェトロの調査レポート「中国のレアアース管理に関する政策の概要と動向(580KB)」を参照。
(注2)条例では、レアアース製品とはレアアース鉱物、各種のレアアース化合物、各種のレアアース金属・合金を指すとしている。
(注3)中国商務部は2023年11月7日、レアアースを「輸出報告を行うエネルギー資源産品リスト」に追加するとの通知を発表した。同リストに掲載された産品を輸出する対外貿易経営者は関連する情報をシステム上で報告する義務を負う。期間は2025年10月31日までとなっている(2023年11月16日記事参照)。
(張敏)
(中国)
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