フランス政府、2026年予算案を提出、防衛費増・富裕層課税強化
(フランス、EU)
パリ発
2025年10月20日
フランス政府は10月14日、2026年の政府予算案(フランス語)を閣議決定し、同日、国民議会(下院)に提出した。最長70日間の審議を経て2025年12月末までの成立を目指す。セバスチャン・ルコルニュ首相は同日の施政方針演説で(2025年10月16日記事参照)、政府が議会の採決を経ずに法案を成立させることができる憲法49条第3条項による強行採決を行わない方針を示し、「議会が審議・修正し、決定する」と強調した。ただ、下院で単独で過半数を占める政党はなく、調整は難航する見通しだ。
政府は2026年の財政赤字をGDP比4.7%以下に引き下げ、2029年までにEUが定める財政規律要件である3%に抑える目標を掲げる。ただし、ルコルニュ首相は施政方針演説において、予算審議の中で2026年の財政赤字目標を緩和する可能性に言及しつつ、「赤字はGDPの5%未満に抑える必要がある」と述べた。
歳出は、前年より105億ユーロ増の5,009億ユーロ。防衛予算を67億ユーロ増額し、内務・司法分野では3,200人の増員と8億ユーロの予算増を予定。教育分野では教員養成改革により8,800人を採用し、エネルギー転換関連予算も拡充する。一方、債務返済や軍備増強を除く省庁予算は実質減額される。
歳入面では、高所得者課税(CDHR)を継続し、年収25万ユーロ以上を対象に最低20%を課税。また持ち株会社の非事業用資産に金融資産税を新設し、富裕層への課税で25億ユーロの税収を確保する。年間売上高10億ユーロ以上の大企業への特別課税も延長し、約40億ユーロの税収を見込む。
一方、中小企業支援として、「当該事業所が生み出す付加価値」を対象とする企業付加価値負担金(CVAE)を段階的に引き下げ、2028年に廃止する方針だ。また、不当な競争への対策として、EU域外から輸入される150ユーロ未満の小包に対し、新たに一律2ユーロの税を導入する。欧州レベルでの制度開始に先行し、2026年秋までに国内で実施される予定だ(2025年5月8日記事参照)。
第2次ルコルニュ内閣の不信任案は否決
下院は10月16日、ルコルニュ首相の再任を受けて、極左「不服従のフランス(LFI)」と極右「国民連合(RN)」がそれぞれ提出した内閣不信任案を採決した。LFI案は271票、RN案は144票にとどまり、いずれも否決された。LFI案には、党として不信任を支持しない方針を表明していた左派「社会党(PS)」から7人が賛成したが、過半数まで18票届かなかった。
(山崎あき)
(フランス、EU)
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