フランス、越境ECの少額輸入貨物に業者負担の手数料導入を提案
(フランス、中国、米国、EU)
パリ発
2025年05月08日
フランス政府は4月29日、中国のオンライン通販業者から配送される少額輸入貨物の大幅な増加に対する行動計画を発表した。2026年以降、EU域外からの少額輸入貨物にEUレベルで定額の手数料を課すメカニズムの導入を提案する。米国が中国の少額輸入貨物に対する関税率を引き上げたことにより、行き場を失った中国の製品(2025年4月10日記事参照)が大量にEUへ流入するリスクに対応するとともに、EU規制の適合性検査、VAT(付加価値税)に関する不正行為対策を強化する。
手数料の徴取は、EU域外からの少額輸入貨物(150ユーロ未満)に対する関税免税措置の廃止が見込まれる(2023年5月18日記事参照)2028年までの暫定的措置とする意向だ。消費者の負担とならないよう、小包1個につき数ユーロをプラットフォーム事業者や輸入業者に課すものとする。政府は関税免除が少額輸入貨物の増加の要因と考え、米国の措置を考慮し、早急な対策が必要と判断した。
徴収した手数料は、海外のプラットフォームから輸入される貨物の通関時の検査を強化する財源とする。越境EC(電子商取引)の貨物の抜き取り検査の対象を2025年中に3倍に引き上げ、安全基準、ラベル表示、環境訴求、商慣行、知的財産の正当性などを全方位で検査する。特に、医薬品、化粧品の検査を強化する。
通関時の検査の結果、市場回収措置の対象となった製品は、Rappel’Conso(注)、SNS、経済・財務・産業およびデジタル主権省の競争・消費・不正防止総局(DGCCRF)のウェブサイトを通じて、注意を喚起し消費者に広く知らせるとともに、EU諸国と情報を共有する。
2024年にEUに輸入された越境ECの貨物のうち、関税免除となる150ユーロ未満の少額輸入貨物は46億個、うち91%が中国からの小包だった。輸入数量は2020年から2022年までの間に倍増し、2022年から2024年にはさらにその倍となった。フランスには年間およそ15億個のEC貨物が届くが、うち8億個が関税免除対象の貨物だ。アメリ・ド・モンシャラン公会計担当相は「危険な製品、模倣品が多く、フランスの規格、税務、環境、社会の要件を順守していない。通関時の検査対象となった94%の製品が不適合で、66%が危険な製品だった」と警鐘を鳴らす。
電子商取引・通信販売事業者協会(FEVAD)によると、中国のプラットフォームのテム(Temu)、シーイン(SHEIN)、アリエクスプレス(AliExpress)の3社は、2024年第2四半期におけるECプラットフォーム・アクセス回数ベスト20(プレスリリース、フランス語)にランクインしている。
EU委員会は、2024年10月、テムに対しデジタル・サービス法違反で調査を開始し、2025年2月に、シーインに対し不正競争、消費者保護などの観点で調査を開始すると発表した。6月には、テムやシーインをターゲットとするファストファッションを規制する法案が審議される予定だ。
(注)事業者の申告により、リコールの対象となった製品を掲載している消費者向けの公開情報サイト。
(奥山直子)
(フランス、中国、米国、EU)
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