欧州委、日本含む3カ国の熱延鋼板のAD関税措置を発動
(EU、ベトナム、エジプト、日本、インド)
ブリュッセル発
2025年10月01日
欧州委員会は9月26日、日本、エジプト、ベトナム製の一部の熱延鋼板に対するアンチダンピング(AD)関税措置を発動した(プレスリリース)。同日、同措置に係る実施規則
をEU官報に掲載し、翌27日に発効した。2030年9月27日までの5年間実施する。日本製については、東京製鐵の対象製品に6.9%、大同特殊鋼とJFEスチールには29.8%、日本製鉄とその他の日本企業には30.0%の従価関税を課す。エジプト製、ベトナム製についてはそれぞれ11.7%、12.1%とした。
欧州委は2024年6月24日、EU域内生産者を代表する欧州鉄鋼連盟(EUROFER)の申し立てを受けて、同年8月8日にAD調査を開始し、2025年4月7日には暫定AD関税措置を発動した。暫定措置に係る実施規則によると、域内の鉄鋼需要の低迷が長引く中(2025年6月16日記事参照)、3カ国からの輸入製品は、価格が低下し続ける一方、市場シェアの拡大が確認されたとし、域内産業への損害を認定した。
暫定措置の発動後も、調査対象国の政府や企業は申し立てを行ったが、認められず、最終措置の発動となった。実施規則によると、3カ国からの調査対象期間(2023年4月~2024年3月)の輸入量は2021年を100とすると、187まで増加した。輸入価格はEU製品より最大で約10%程度低く、EU市場でのシェアは最大で10%まで拡大したとみられる(2021年比で約4ポイント増)。一方、域内生産者は2023年以降、生産量、販売量ともに減らし、工場稼働率の改善も厳しく、収益が大幅に減少している。市場シェア維持のため、輸入品の価格水準に追従せざるを得ず、損害を受けたとして、不当廉売との因果関係を否定できないという、暫定措置の発動時点で示した説明を維持した。
欧州委は2024年10月以降、全てのADと反補助金調査の対象製品の輸入登録を義務付けているが(2025年8月12日記事参照)、今回も調査開始後に輸入登録を行った。しかし、収集したデータに基づき、輸入量は暫定措置の発動以降、減少傾向にあるとして、関税の遡及(そきゅう)徴収をしないと決定した。
なお、3カ国とともに調査対象だったインド製品については、ダンピングが認められなかったとして調査終了となった。
(滝澤祥子)
(EU、ベトナム、エジプト、日本、インド)
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