2024年のEUの鉄鋼需要、3年連続で前年割れ、2025年も厳しい見通し

(EU、米国)

ブリュッセル発

2025年06月16日

欧州鉄鋼連盟(EUROFER)は6月5日、四半期ごとに発表しているEU経済と鉄鋼市場の見通しを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2024年のEUの鉄鋼需要は前年比1.1%減と、3年連続で前年割れとなった。また、EU域内消費向け生産量は同2.8%減だった。

一方、2024年のEUへの完成品の輸入量は同7%増となり、EUの鉄鋼需要に占める輸入品の割合は27%で、EUROFERは引き続き高水準にあると述べた。

2025年の鉄鋼需要は前年比0.9%減と予測した。前回見通し(2025年2月発表)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では同2.2%増としていたが、米国の鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税措置(2025年6月4日記事参照)、また、それに伴う不確実性の高まりや市場の混乱を理由に、大幅に下方修正した。2025年内の需要回復は期待できないが、2026年については、経済回復や国際的な緊張緩和が進んだ場合、同3.4%増と前向きな予測を示した。ただし、現段階で正確な状況は予測できないとした。

鉄鋼ユーザー業界の2024年の生産高は、特に建設と自動車部門の不振を受け、前年比3.7%減と、前回見通し(同3.3%減)以上に落ち込んだ。2025年は米国の関税措置の影響で同0.5%減となるが、2026年は同1.3%増と緩やかだが回復すると予測した。

長引く鉄鋼需要の低迷は、鉄鋼部門のEU域内での生産縮小と人員整理や、脱炭素化事業の停滞につながっている。事態を重くみた欧州委員会は3月、域内生産の維持や脱炭素化に向けた支援策として「鉄鋼・金属行動計画」(2025年3月27日記事参照)を発表した。アルセロール・ミタルが5月にフランスでの脱炭素化事業の再開を発表する(2025年5月20日記事参照)など、前向きな動きが出てきたが、米国が6月4日から鉄鋼・アルミニウム製品に対する追加関税率を25%から50%に引き上げたことを受け、EUROFERは、米国との交渉による解決に加え、EU市場への安価な製品の流入拡大の恐れから、さらに強力な貿易措置の早期実施を欧州委に働きかけている(2025年6月9日記事参照)。

(滝澤祥子)

(EU、米国)

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