IMF、MENA地域の実質GDP成長率予測を上方修正、米国関税の影響回避

(中東、湾岸協力会議(GCC)、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、イラン、エジプト、モロッコ、米国)

調査部中東アフリカ課

2025年10月22日

IMFは10月21日に発表した「地域経済見通し(中東・中央アジア)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、2025年の中東・北アフリカ(MENA)地域(注1)の実質GDP成長率の予測を3.3%とし、2025年5月の予測2.6%から上方修正した(2025年5月16日記事参照)。この数値は2025年の世界の経済成長率予測の3.2%をわずかに上回っており、2026年の実質GDP成長率予測でも世界全体の3.1%に対して、MENA地域は3.7%の成長を予測している(添付資料図参照)。

IMFによると、2025年6月のイスラエルとイランの衝突(「イスラエル・イラン情勢に関する動向、各国の反応」参照)など、世界的な不確実性の継続と地政学的緊張の高まりにもかかわらず、MENA地域の2025年の経済は高い回復力を示した。同地域は米国の関税引き上げや世界的な貿易の制限による直接的な影響をほぼ回避したという。貿易紛争や地域紛争による緊張の高まりについては、イスラエルとイランの衝突がホルムズ海峡を通過する貿易に短期的に影響を与えたものの、地域間や中国、EUとの貿易に支えられ、MENA地域諸国の貿易活動に大きな影響はなかったとした。一方、スエズ運河を通過する貿易量は2024年の大幅な減少から回復していないとした。また、米国関税については、米国市場への依存度が低いことや、石油製品が新たな関税の対象から除外されていることから、商品輸出への影響は限定的であるとした。

国・地域によっても経済状況の予測は異なる。IMFが分類するMENA地域・パキスタン・アフガニスタンのうちの石油輸出国(注2)は、OPECプラス(注3)の減産終了(2025年10月7日記事参照)に伴う石油生産の増加を背景に、2025年は3.0%、2026年は3.4%の成長を予測する。加えて、湾岸協力会議(GCC)諸国については、非石油部門の成長が続くという。また、石油輸入国・地域(注4)でも、経済成長は回復しつつある。原油価格の低下や農業環境の改善、海外在留者の自国への海外送金や観光客の増加により、2025年は3.5%、2026年は4.1%と、石油輸出国を上回る成長を予測している。

(注1)アルジェリア、バーレーン、ジブチ、エジプト、イラン、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビア、モーリタニア、モロッコ、オマーン、カタール、サウジアラビア、ソマリア、スーダン、シリア、チュニジア、アラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダン川西岸地区とガザ地区、イエメン。

(注2)バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、UAE、アルジェリア、イラン、イラク、リビア。

(注3)OPEC加盟国のイラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、ベネズエラ、リビア、UAE、アルジェリア、ナイジェリア、ガボン、赤道ギニア、コンゴ共和国の12カ国と、非加盟の産油国のアゼルバイジャン、バーレーン、ブラジル、ブルネイ、カザフスタン、マレーシア、メキシコ、オマーン、ロシア、スーダン、南スーダンの11カ国で構成する。

(注4)エジプト、ヨルダン、レバノン、モロッコ、パキスタン、チュニジア、ヨルダン川西岸地区とガザ地区、アフガニスタン、ジブチ、モーリタニア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメン。

(加藤皓人)

(中東、湾岸協力会議(GCC)、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、イラン、エジプト、モロッコ、米国)

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