米運輸省、メキシコ航空会社の13路線認可取り消しを発表

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2025年10月31日

米国運輸省は10月28日、メキシコの航空会社が運航する13の既存および就航予定の米国向け路線の認可を取り消すと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。フェリペ・アンヘレス国際空港(AIFA)と米国間の旅客・貨物混合便を停止させ、AIFA発着の新規路線の申請や、メキシコ市国際空港(AICM)発着の既存路線の拡大を凍結するものだ。

今回の決定の理由として、米国運輸省は、(1)AICMから他空港への貨物専用便の移転を命じたメキシコ大統領令、(2)AICMにおける1時間当たりの運航便の配分、の2点(注1)が、2国間協定(注2)に違反しているためと主張している。米国政府による今回の措置で影響を受けるメキシコの航空会社および路線は次のとおり(注3)。

  • アエロメヒコ:AIFA・ヒューストンおよびマッカレン便(既存路線、11月7日以降停止)、AICM・サンフアン便(就航予定便)
  • ボラリス:AICM・ニューアーク便(就航予定便)
  • ビバ・アエロブス:AIFA・オースティン、ニューヨーク、シカゴ、ダラス、デンバー、ヒューストン、ロサンゼルス、マイアミおよびオーランド便(就航予定便)

また、米国運輸省はこれらの措置に加え、AICMを発着するメキシコ航空会社の旅客便による貨物輸送(ベリーカーゴ)を禁止する措置も提案中だ。この提案は今後、最終決定が下された108営業日後に発効するとされている(注4)。

メキシコ大統領は米国政府の一方的な決定に反論

クラウディア・シェインバウム大統領は翌29日の定例会見において、米国政府による今回の停止措置は一方的な行動だと非難した。貨物専用便のAIFAへの移動は、AICMの飽和状態を解決し、市民保護と安全上の理由によるものだと反論するとともに、現在AIFAを利用する米国企業を含む貨物企業は、広いスペースとコンテナ搬出時の安全性向上に満足しており不満は聞こえないと強調した。

その上で、米国運輸長官を交えた会談の要請、米国航空会社が実際に受けている影響について国家独占禁止委員会〔CNA、旧COFECE(連邦経済競争委員会)〕への調査要請、停止措置の影響を受けるメキシコ航空会社3社と会合を設ける点、について言及した。シェインバウム大統領は「メキシコは尊重されるべきだ」と述べ、対話と理解を通じて、今回の措置が続行されないよう努める意向を示した。

(注1)メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)前政権による、AICMの飽和状態の解消および安全確保を理由として取られた対策。AICMでの貨物専用便の運航を禁止し、他空港へ全便移転を義務付けるとともに(2023年7月11日記事参照)、AICMで航空会社が運航できる1時間当たりの運航便上限数を削減した(2023年9月4日記事2025年5月29日記事参照)。

(注2)米国政府とメキシコ政府との間の航空運送協定。2015年に署名され、2016年に発効した米墨間の協定で、通称「オープンスカイ協定」とも呼ばれる(米墨間協定だけでなく、米国が各国と結ぶ航空運送協定の総称)。両国間の路線や便数の制限を撤廃し、航空会社間の公正な競争の促進を目的とする。米国政府は、メキシコ政府による一連の空港政策が、この協定の定める「公正な競争条件」を一方的に害していると主張している。

(注3)各路線の動向については、航空各社のウェブサイトなどで最新情報を確認のこと。

(注4)2023年にメキシコ政府がAICMから他空港へ貨物専用便移転を命じた際、猶予期間は同じく「108日」だった(2023年2月6日記事参照)。メキシコ政府に対する、米国政府の報復措置とみられる。

(深澤竜太)

(メキシコ、米国)

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