メキシコ市国際空港での貨物専用便の発着禁じる政令公布、猶予は108営業日

(メキシコ)

メキシコ発

2023年02月06日

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は2月2日、メキシコ市国際空港(AICM)で貨物専用便の発着を禁じる政令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布、翌日施行した。AICMの混雑緩和が目的で、1月17日以降、パブリックコメント公募のために国家規制改善委員会(CONAMER)のウェブサイトに政令案が掲載されていた(2023年1月24日記事参照)。AICMで貨物専用便の運航を行う航空会社は、108営業日以内にAICM以外の空港にフライトを移す必要がある。当初草案の90営業日から18営業日延長したものの、航空業界が要請していた360日には程遠い猶予期間だ。

政令案には、民間事業者から多くの反対意見が出ていた。2月1日にはカタール航空がCONAMERに意見書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを送付し、民間航空庁(AFAC)は政令案の規制影響評価で貨物専用便の移転がもたらす費用と便益について現実に即した総合的な調査をしておらず、AICMの飽和を招いている運航や時間帯は主に旅客輸送によるものだとして、貨物専用便の移転は抜本的解決策になり得ないと主張している。そして、移転に伴って発生する損失を補い、移転が経済的に成り立つための補助金を航空会社に支給することを連邦政府に求めた。連邦経済競争委員会(COFECE)も1月26日に意見書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを送付し、移転先の空港のインフラや物流状況を改善する政策が実施に移され、それが完了するまでは、AICMでの貨物専用便の運航を禁止するべきではないと提言するとともに、規制改善一般法(LGMR)第73条が定める最低限のパブコメ募集期間(20日)を尊重すべきだとした。

結局、これらの意見は考慮されず、草案掲載から17日目の2月2日に政令は公布された。政令付則第9条は、施行に伴って発生する歳出は既に承認された各省庁の予算から賄うとし、追加の予算は認められないと定めているため、フェリペ・アンヘレス国際空港(AIFA)をはじめとする代替空港のインフラ整備が実現するのかは未知数だ。AMLO大統領は2月3日の記者会見で、AIFA運営公社のイシドロ・パストール長官に電話し、AIFAの貨物取り扱い能力は現状でも十分で、40%の余剰能力があるとの回答を得ている(大統領府記者会見録2023年2月3日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

なお、2023年の貿易細則(RGCE2023)別添21に基づき、放射性物質、前駆体、たばこ、履物、アルコール飲料、炭化水素・燃料は、首都圏の空港ではAICMでしか輸入が認められない品目(注)で、これらをAIFAなどで扱うには貿易細則の改定が必要だ。

運賃が下がらなければ外国企業のカボタージュ許容も辞さず

AMLO大統領は2月3日の記者会見で、国内フライトの運賃が高いと批判し、運賃が今後下がらなければ、競争促進のために外国の航空会社にカボタージュ(メキシコ国内の2地点間の旅客と貨物の輸送)を認める(2023年1月24日記事参照)ことも辞さないと語った。「権威主義的な政策を採るつもりはない」「価格が下がればその必要はない」と語っているが、既にカボタージュを認める法案を2022年12月15日に国会に提出しているため、今後の動向が注目される。

(注)アルコール飲料はメキシコ州のトルーカ国際空港でも輸入通関が可能だが、AIFAでは現時点で通関不可能。その他はAICM税関のみで輸入通関が認められている。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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