トランプ米大統領、国連総会で演説、通商面では関税の正当性を主張

(米国)

ニューヨーク

2025年09月25日

米国のドナルド・トランプ大統領は9月23日、国連総会で演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。世界中に終わりのない紛争と混乱をもたらしてきたとして、「グローバリズム」を批判し、関税については、米国の主権を維持する手段として課していると主張した。

トランプ氏は貿易について、「課題は気候問題と本質的に同じだ」とし、ルールを守ってきた国々の工場は、ルールを破った国々によって壊されたと述べ、「だからこそ米国は今、他国に関税を課している」と主張した。トランプ氏は2期目の政権発足(2025年1月)以降、複数の追加関税を課している(2025年8月1日記事参照、注1)。トランプ氏はまた、追加関税を課してもインフレは低水準だと述べ、関税は「(国際通商)システムが万人のために機能し、将来にわたって持続可能であることを保証する方法」であり、関税によって「主権と安全保障を守っている」と強調した。

米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表も度々、WTOを基軸とした現在の通商システムの下で、米国は雇用と経済安全保障を喪失し、システムは持続不可能な状態だと指摘している。グリア氏は、相互関税発表後に行われた米国と各国・地域との交渉を「トランプ・ラウンド」と称し、その結果生まれた、双方の関税撤廃という従来型協定ではない新しい状況を「ターンベリー・システム」と名付け、新しい国際通商システムへ移行する必要性を訴えている(2025年9月5日記事参照)。

なお、相互関税などの追加関税措置そのものについては米国内でも批判はあるものの、同盟国と懸念国、市場経済国と非市場経済国を区別せずに一律の関税率を適用する最恵国待遇(MFN、注2)に対しては、制度の改革を訴える声が党派を超えて強まっており、首都ワシントンでは、米国が従来の国際通商システムに完全に戻ることはない、とする指摘が複数聞かれる(2025年9月10日付地域・分析レポート参照)。

また、トランプ氏は演説の中で、ロシアとウクライナの戦争について、中国とインドがロシア産原油の購入を継続することで、現在進行中の戦争におけるロシアの主要な資金源となっていると指摘した(注3)。NATO加盟国に対しても、ロシア産エネルギーの輸入をほとんど削減していないと批判した。ロシアが戦争終結に向けた合意に消極的であれば、強力な関税措置を即座に発動する用意があるとしつつも、この関税が効果を発揮するには、「ここに集う欧州諸国がわれわれと完全に足並みをそろえなければならない」と主張した。

そのほかトランプ氏は演説で、4カ月連続で不法移民はゼロ、7つの「終わらせられない」戦争を終わらせた、などと自身の成果を述べた上で、「国連は本来解決すべき問題を解決していないばかりか、むしろ新たな問題をわれわれに押し付けている」と国連を批判した。トランプ大統領は2025年2月に、国連人権理事会(UNHRC)からの離脱などを指示する大統領令を発表している(2025年2月6日記事参照)。

(注1)トランプ政権2期目の関税措置については、ジェトロのウェブサイト参照。

(注2)WTO加盟国は、最も低い関税率を適用している加盟国と同じ関税率を他の加盟国にも適用しなければならないWTOの基本的な原則の1つ。

(注3)米国は現在、インドに対してのみ、ロシアからの石油輸入を理由に追加関税を賦課している(2025年8月7日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国)

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