スイス中銀、政策金利を0%に据え置き、インフレ率はわずかに上昇
(スイス)
ジュネーブ発
2025年09月26日
スイス中央銀行(SNB)は9月25日、政策金利を0%に据え置くと発表した。9年ぶりに利下げした2024年3月の会合、さらに、6月の会合(2024年6月24日記事参照)、9月の会合(2024年9月27日記事参照)、12月の会合(2024年12月13日記事参照)、2025年3月の会合(2025年3月21日記事参照)、6月の会合(2025年6月20日記事参照)と、6会合連続で利下げを進めてきたが、前回会合で政策金利が0%に達したこともあり、1年9カ月ぶりに政策金利を据え置いた。
SNBは、インフレ圧力が前四半期と比較してほとんど変わっていないとし、物価の安定を確保するために、引き続き状況を注視し、必要に応じて金融政策を調整していくとしている。消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率)は、前回6月の金融政策評価以来、5月のマイナス0.1%から8月の0.2%へと、わずかに上昇している。SNBは、この増加は主に観光業と輸入品のインフレ率上昇に起因すると説明している。短期的にはインフレ率が若干上昇する可能性が高いが、中期的にはSNBの条件付きインフレ率の予測は6月の予測と変わらず、2025年の年平均は0.2%、2026年は0.5%、2027年は0.7%としている。この予測は、SNBの政策金利が予測期間中、0%に維持されることを前提としている。
スイスの経済成長率は、第1四半期(1~3月)に力強く増加した後、第2四半期(4~6月)は弱く、GDP成長率は0.5%にとどまった。上半期の大きな変動は主に製薬業界によるもので、米国への納入が前倒しされたため、第1四半期の付加価値が大幅に上昇したと、SNBは分析している。第2四半期はその反動があった一方、サービス部門が経済を支えた。失業率はここ数カ月でさらに上昇している。
スイスの経済見通しは、米国による関税大幅引き上げにより悪化している。関税は輸出と投資を抑制する可能性が指摘されている。機械産業や時計製造業の企業が特に影響を受けており、これまでのところ、他の産業、特にサービス業への影響は限定的だと、SNBは分析している。多くの指標は依然として安定した状況と緩やかな成長を示しており、2025年のGDP成長率は引き続き1~1.5%と予測している。他方、2026年の成長率は、関税と高い不確実性により1%をわずかに下回ると予測している。こうした環境の下、失業率は今後も上昇し続ける可能性が高いとしている。スイス経済の見通しは依然として不透明で、米国の貿易政策と世界経済の動向が主なリスクだと分析している。
(田中晋)
(スイス)
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