国連、AIガバナンスに関する協力促進に向け新たな枠組み設置

(世界)

調査部国際経済課

2025年09月03日

国連総会で8月26日、人工知能(AI)のガバナンスに関する協力促進に向け、新たな枠組みを設置することが決定された。今回設置が決定されたのは、「AIに関する独立国際科学パネル(以下、パネル)」と「AIガバナンスに関する国際対話(以下、対話)」の2つ。これらは、2024年9月の国連未来サミットで採択されたグローバル・デジタル・コンパクトでコミットしていたもの。

パネルについては、40人の委員で構成し、AIによる機会、リスク、影響に関する研究をまとめ、分析し、年次報告書を作成するとしている。対話については、各国政府や関係者が、国際協力に関する議論などを行う場として位置付けている。加えて、持続可能な開発目標の実現や、国家間および国内の情報格差の削減に対するAIの貢献という観点でも議論を行う。第1回は2026年にスイス、第2回は2027年に米国で開催する予定。対話の具体的な議題としては次が挙げられている。

  • 安全、安心かつ信頼あるAIシステムの開発
  • AIに関する格差の是正に向けた能力構築、AI利用へのアクセス促進、高性能コンピュータに関する能力や開発途上国におけるスキルの構築
  • AIにおける人権の尊重、保護および促進
  • 国際法を順守したAIシステムの透明性、アカウンタビリティ、人間による監督
  • オープンソースのソフトウエアや、オープンデータ、AIモデルの開発

各国も方針示す

中国では、7月26~28日に開催された世界AI大会の開幕式に合わせた演説で、李強首相が、世界的な共同ガバナンスを意識しAIの正しい発展を促進することを提案。会期中には、グローバル・デジタル・コンパクトで示されたコミットメントの実現に向けた行動計画も発表されている(2025年8月7日記事参照)。

これに先立つ7月23日には、米国トランプ政権がAI行動計画を発表(2025年7月25日記事参照)、ガバナンスに関しても一部言及があった。現状、国際機関によるガバナンス策定に向けた取り組みの多くが、煩雑な規制や、米国の価値観に沿わない文化的アジェンダを促進する行動指針を支持するものとなっていると批判。さらに、顔認識や監視に関する標準形成を意図した中国企業による影響を受けていると続けた。これらを踏まえ、米国としてはイノベーションの促進や米国の価値観の反映、権威主義的な影響への対抗につながるアプローチを提唱するとしている。

(山田恭之)

(世界)

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