2025世界AI大会、世界人工知能協力組織の設立を提唱
(中国)
上海発
2025年08月07日
2025世界人工知能(AI)大会(WAIC)が7月26~28日、中国・上海市で開催された。大会事務局の発表によると、展示面積は初めて7万平方メートルを突破し、出展企業は800社以上(上海市外・海外企業が50%超)に上った。延べ来場者数も約35万人に達し、過去最大規模となった。展示製品・技術は3,000点以上で、大規模言語モデル(LLM)40種類以上、AIロボット60種類以上を含み、100を超える「世界初公開」「中国初登場」の製品も披露され、展示総数や新製品の初公開数は前年から倍増した。
中国企業では、AIサービスの開発・提供を積極化するIT大手の華為技術(ファーウェイ)、騰訊科技(テンセント)、百度(バイドゥ)などが出展したほか、多数の新興AI企業も自社開発の最新技術を披露し、存在感を示した(出展企業の約半数はスタートアップなど革新的企業)。外国企業では、電気自動車(EV)メーカーのテスラや、アマゾン、グーグルといった米国企業の参加も目立った。日本企業ではリコー、日鉄ソリューションズなどが出展した。会期中に32件の大型プロジェクト契約が締結され、総投資額は450億元超(約9,450億円、1元=約21円)に達した。契約案件は自動運転(スマートモビリティー)やエンボディドAI(注)分野など多岐にわたった。
開幕式には李強首相や国連のアントニオ・グテーレス事務総長らが出席し、国内外のAI産業や学術、研究機関関係者を含む約1,000人のゲストが参加した。李強首相は演説で、習近平国家主席が2025年4月に上海市を視察した際にAI技術の爆発的発展に言及したと述べ、「より安全で信頼性のある高品質なAI製品の開発」と「政策支援と人材育成の強化」の必要性を強調したことを紹介した上で、「AIは人類にとって国際的な公共財となるべき」とし、次の3点を提案した。
- 「普及と包摂」を重視した上で、既存の成果を十分に活用すること
- 「革新と協力」を進め、AIの科学技術のブレークスルーを目指すこと
- 「世界的な共同ガバナンス」を意識し、AIの正しい発展を促進すること
また、中国政府として「世界人工知能協力組織」の設立を提唱し、本部を上海市に設ける方針を表明した。
会期中には「AIグローバルガバナンス行動計画」が発表され、今後の国際的なAIガバナンス枠組み形成に向けた道筋が示された。最終日の閉幕式では上海市が「人工知能応用のさらなる拡大に関する若干の措置」を発表し、AIの開発から実装、普及に至るまで、都市レベルでのエコシステム強化を目的とした12の補助・優遇政策を打ち出した。
(左)テスラの出展、(右)ANTグループによるAI医師の展示(ジェトロ撮影)
(左)世界AI大会開催の様子、(右)人型ロボット作業員の展示(ジェトロ撮影)
(注)物体を操作したり、人とコミュニケーションを取って物理的な作業を支援したりする身体性を持つエージェントベースのAIシステム。
(佐川将平)
(中国)
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