米国、政府閉鎖の回避に向けた協議は不調、政府閉鎖の可能性高まる
(米国)
ニューヨーク発
2025年09月30日
米国では、2026会計年度(2025年10月1日~2026年9月30日)の歳出法案が成立するまでの間、つなぎ予算を策定することで政府閉鎖の回避を目指している(2025年9月22日記事参照)が、これをめぐる与野党協議は依然として妥結に至っていない。
2025年9月29日には、チャック・シューマー上院少数党院内総務(ニューヨーク州、民主党)、ハキーム・ジェフェリーズ下院少数党院内総務(ニューヨーク州、民主党)がドナルド・トランプ大統領および共和党指導部と政府閉鎖の回避に向けた協議を行ったものの、2025年末に期限を迎える医療費負担適正化法(オバマケア)に基づく医療保険補助金の延長などを巡る双方の隔たりが大きく、合意には至らなかったもようだ(政治専門誌ポリティコ9月29日)。
このまま9月30日までに合意に至らなかった場合、第1次トランプ政権下の2018年に35日間の政府閉鎖が実施されて以来のこととなる。ラッセル・ボード行政管理予算局(OMB)局長は、各省庁に対して政府閉鎖が実施された場合の人員削減計画の策定を求めている。この中では「大きく美しい1つの法案」など歳出法案以外の法律によって資金供給が義務付けられておらず、かつ政権の優先事項に沿っていないプログラムに従事する職員については解雇を検討するよう求めていることから、政府閉鎖が実施された場合の影響は長期的なものとなる可能性もある(「ワシントン・ポスト」紙9月25日)。
また、労働省は政府閉鎖となった場合に影響のあるプログラムを発表しており、この中には経済統計の公表も含まれている。10月3日には雇用統計、10月15日には消費者物価指数の公表が予定されているが、これらが公表できない場合、次回の連邦公開市場委員会(FOMC)において、連邦準備制度理事会(FRB)は有力な判断材料を欠いたままで金融政策の判断を迫られることとなる。FOMC参加者の金融政策の先行き判断が割れる中(2025年9月18日記事参照)、一層困難な舵取りを迫られる可能性がある。
(加藤翔一)
(米国)
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