欧州の風力発電新設、ドイツが主導的な役割を果たす
(ドイツ、欧州、EU)
デュッセルドルフ発
2025年09月16日
欧州風力協会(ウインド・ヨーロッパ)は9月2日、欧州の風力発電の現状に関する2025年上半期の調査レポートを発表した。
新設された風力発電所による発電量は、欧州域(注1)全体で6.8ギガワット(GW)(注2)に達し、うちドイツが最大の2.2GWの新規発電容量を占め、主導的な役割を果たしている。2025年上半期の欧州域の新規風力タービンの発注量は、前年同期比約19%増となり堅調だ。また、風力発電所新設への最終投資決定(FID)額はこの上半期で340億ユーロに達し、2024年通年の投資額(326億ユーロ)をすでに上回った。
しかし、導入の進捗には課題が残る。EUが掲げる2030年までに最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギー(再エネ)の比率を42.5%に引き上げる目標(2025年1月27日記事参照)の達成には、現在236GWの風力による総発電量を425GWにまで増やす必要がある。同レポートでは、2030年までに新設予定の風力発電所による総発電量は344GW程度と見込んでおり、目標との乖離があることが示されている。
EU各国に対して、再エネによる発電プロジェクトの許認可手続きの迅速化・簡素化などを求めるEUの再エネ指令改正法(REDIII)も、ほとんどの国は2025年5月21日が期限だった国内法化に苦慮、法整備や政策立案の遅れが目立つ(2025年7月31日記事参照)。
ドイツは、REDIIIの国内法化自体は2025年7月11日に連邦参議院で可決したが(プレスリリース)、前ショルツ政権の「イースター・パッケージ」(2022年4月18日記事参照)により再エネ発電プロジェクトの許認可の簡素化を推し進めてきた。ドイツ連邦風力発電協会(BWE)のベアベル・ハイデブローク会長はこの度のウインド・ヨーロッパの調査レポートの内容に対して、「ドイツは他のEU諸国を大きく上回る数の風力発電所を新設している。この成功は、EU指令を踏まえた着実な政策実施、許認可手続きの簡素化、連邦政府による用地の指定、そして強力な業界の存在に支えられている」と述べた。
(注1)EU27カ国に加え、英国、トルコ、ノルウェー、スイスなど地理的・経済的に密接な関係を持つ計40カ国が調査対象。
(注2)陸上風力発電および洋上風力発電を合わせた総容量。
(マリナ・プタキドウ、櫻澤健吾)
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