欧州中央銀行、2会合連続で主要政策金利の据え置き決定

(EU、ユーロ圏)

調査部欧州課

2025年09月12日

欧州中央銀行(ECB)は9月11日、ドイツ・フランクフルトで開催した政策理事会で、3つの主要政策金利の据え置きを決定した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。預金金利は2.0%、政策金利(主要リファイナンス・オペ金利)は2.15%、限界貸出ファシリティー金利(オーバーナイト貸し出し、翌日返済)は2.4%に維持する。6月まで7会合連続で主要金利を引き下げていたが(2025年6月6日記事参照)、前回7月の会合で8会合ぶりの据え置きを決定していた(2025年7月25日記事参照)。今回の会合では、インフレ率はユーロ圏の中期目標2%前後で推移しており、インフレの見通しに関する評価はおおむね変わらないとして、2回合連続での据え置きとなった。

インフレ率は、2025年に2.1%、2026年に1.7%、2027年には1.9%と、ECBのエコノミストは予測する。エネルギー・食品を除いたコアインフレ率についても、2025年は2.4%、2026年は1.9%、2027年には1.8%となると見通している。ユーロ圏の経済成長率は、2025年に1.2%と予測し、6月予測から0.3ポイント上方修正した。2026年は1.0%、2027年は1.3%と予測している。

ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁は記者会見で「米国との関税合意によって不確実性が低下し、経済成長に対するリスクはより均衡した」とし、足元の経済状況は引き続き「良好」と評価した。「貿易関係の悪化が再燃すれば、輸出がさらに減速し、投資と消費を押し下げる可能性がある」とした一方、「予想を上回る防衛産業・インフラへの支出が経済成長を押し上げる可能性がある」と述べた。インフレ見通しについては、貿易政策の不透明性によって「通常より不確実性が高い」とし、「関税の引き上げにより、過剰生産能力を持つ国々がユーロ圏向けの輸出をさらに拡大した場合、インフレ率が予測より低下する可能性もある」と指摘した。

今後の金融政策の方向性については明言せず、経済と金融のデータや金融政策の効果などを踏まえたインフレ見通しとリスク評価に基づき、今後も会合ごとに適切な政策対応をとるスタンスを維持する考えを示した。次回の金融政策理事会は10月29~30日を予定している。

(川嶋康子)

(EU、ユーロ圏)

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