米韓政府、ジョージア州現代自動車グループ拠点で拘束された不法滞在者の解放に合意

(米国、韓国)

アトランタ発

2025年09月09日

米国ジョージア州ブライアン郡に位置する韓国の現代自動車グループのバッテリー工場で、9月4日に実施された移民取り締まりの査察(2025年9月8日記事参照)で拘束された不法滞在者について、最終的な行政手続きが完了した後、韓国からチャーター機を派遣して帰国させることで米韓両政府が合意したと複数メディアが報道した。

査察対象となったのは、LGエナジーソリューションと連携して建設中のバッテリー工場で、逮捕者数475人のうち300人以上は韓国人労働者との情報もあり、米韓の政府間協議が行われていた。今回の査察を受けて、ドナルド・トランプ大統領は、米国人の教育のために国外から労働者を合法的に招聘(しょうへい)することは歓迎するとしつつ、現代自動車のような企業は米国の移民法を順守する必要があると述べた。

米移民税関捜査局(ICE)は9月5日、企業名は公開しなかったものの、ジョージア州における不法就労や連邦犯罪を対象とした複数機関合同作戦の実施を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。査察の様子を記録した動画とともに、「米国への投資を希望する全ての企業を歓迎する。建設プロジェクトなどのために労働者を招聘する必要がある場合も問題ない。ただし、合法的に行う必要がある。今回の捜査は、制度を悪用して米国の労働力の土台を崩す者には責任が問われるという明確なメッセージを送るもの」という国土安全保障省捜査局(HSI)のスティーブン・シュランク特別捜査官のコメントを掲載した。

今回の取り締まりは、その規模の大きさとともに、ジョージア州政府が同州最大の経済開発プロジェクトと呼んできた現代自動車グループの電気自動車(EV)関連施設を標的とした点で、特に際立ったものだと報じられている(CBSニュース9月7日、注)。また、韓国の証券会社各社はレポートで、今回の事件により米国で合法的な就労許可を持つ熟練労働者の不足が深刻化し、米国内の主要プロジェクトで混乱やコスト増が生じる可能性を指摘したほか、対象となったバッテリー工場の2026年早期の生産開始に影響が出る恐れがあり、現代自動車の米国EV事業にも波及する可能性があるとした(ABCニュース9月8日)。

(注)2026年の連邦下院議員選挙に立候補している共和党所属の地元政治家がICEに通報したと自身のSNSで報告している。現代自動車グループのEV組立工場は2年という短期間での操業開始となったが、2025年6月時点で建設現場では3件の死亡事故や15件の重傷事故が発生したとして、就労環境などについて問題視する報道もあり(「アトランタ・ジャーナル・コンスティテューション」電子版9月5日)、このような状況が同政治家の通報の背景にあったようだ。

(檀野浩規)

(米国、韓国)

ビジネス短信 7106bbea5786adaa