米移民税関捜査局、ジョージア州の現代自動車グループを査察、450人以上を拘束

(米国、韓国)

アトランタ発

2025年09月08日

米国のアルコール・たばこ・火器・爆発物取締局アトランタ支部は9月4日、移民税関捜査局(ICE)や国土安全保障省捜査局(HSI)などと連携して、ジョージア州ブライアン郡に位置する韓国の現代自動車グループのバッテリー工場で移民取り締まりの査察を同日に実施し、約450人の不法滞在外国人を拘束したとSNSに投稿した。

現代は2022年、電気自動車(EV)組立工場とバッテリー工場をブライアン郡に建設するために総額75億ドルの投資を発表し、EV組立工場は2025年3月に稼働を開始した(2022年5月23日2025年4月1日記事参照)。

今回査察の対象となったのは、LGエナジーソリューションと連携して建設中のバッテリー工場のみで、今回の件を受けてバッテリー工場の建設は一時中断したものの、EV組立工場の操業は中断されていないとのことだ(APニュース9月4日)。

現代によるジョージア州への巨額のEV関連投資は、ブライアン・ケンプ知事(共和党)の最大の功績の1つとされており、同州での米国外企業の投資では過去最大規模だ。HSIのスティーブン・シュランク特別捜査官はメディアに対し、逮捕者数は475人で全員が不法滞在者、国籍別の内訳は不明だが、「大半は韓国籍」と述べた(CNN9月5日)。また、同氏によると、今回の取り締まりは、単一拠点に対するHSI史上最大のものだったという(ABCニュース9月5日)。

逮捕者のうち300人以上が韓国人労働者との情報もあり、韓国外務省の李在雄(イ・ジェウン)報道官は9月5日の記者会見で「米国に投資する韓国企業の経済活動と韓国国民の権益が不当に侵害されてはならない」「本日、在韓米国大使館を通じて懸念と遺憾の意を伝えた」と述べた(ヨナプニュース 9月5日)。

2025年1月以降、ICEアトランタ支部(注1)での移民取り締まりの逮捕者数は急増している(添付資料表参照)。カリフォルニア大学バークレー校の「強制送還データプロジェクト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」のデータ(注2)によると、2025年1~7月のICEアトランタ支部の逮捕者数は1万464人で、支部別で全米5位だ(注3)。アトランタ支部の逮捕者数は前年同期間と比較して2倍以上となっており、上位4支部の伸びよりも大きく、2025年内に逮捕者数が上位の拠点を超える可能性もある。

(注1)ICEアトランタ支部の管轄地域は、ジョージア、サウスカロライナ、ノースカロライナの3州。

(注2)同プロジェクトでは、ジャーナリスト、研究者、弁護士、政策立案者によって活用されることを想定して、米国政府の移民取り締まりに関する公開データセットを収集・匿名化し公開している。同プロジェクトのデータは、同プロジェクトからの情報公開法に基づいた請求に応じてICEが提供したもの。

(注3)アトランタ支部より逮捕者数が多いのは、マイアミ(1万6,104人)、ニューオーリンズ(1万1,937人)、ダラス(1万1,287人)、ヒューストン(1万9,94人)の4支部。

(檀野浩規)

(米国、韓国)

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