イタリア政府とステランティス、EUとの対話強化などで合意
(イタリア、EU)
ミラノ発
2025年09月18日
自動車大手ステランティスのアントニオ・フィローザ最高経営責任者(CEO)は9月8日、イタリアでアドルフォ・ウルソ企業・メードインイタリー相、イタリア自動車工業会(ANFIA)のロベルト・ババッソーリ会長と会談した。イタリア政府の同日付発表(企業・メードインイタリー省ウェブサイト、イタリア語)によると、商用車に関するEUの規制見直しや、イタリアの主要市場セグメントである小型車の生産促進のための支援拡充などについて議論した。また、3者は、EUの自動車の二酸化炭素(CO2)排出基準規則(2025年4月7日記事参照)での技術的中立性や柔軟性について、近く欧州委員会やEU加盟国との対話を強化する方針を固めた。さらに、イタリアのサプライチェーン競争力と今後の展望に関する調査結果を確認するため、会合を再度開くことでも合意した。
イタリア政府とステランティスは2024年12月にステランティスがイタリアでの新経営計画を発表して以来、関係は好転している(2024年12月27日記事参照)。ただし、報道によると、国内の雇用の保証などについて具体的に明記し、より拘束力のある事業計画が必要だとの声が政府内部からも出ているもようだ。
2025年1~8月の新車登録台数、2019年同期比で約22%減
外国自動車代理店組合(UNRAE)によると、イタリアの8月の新規登録車台数は6万7,272台で、前年同月の6万9,126台から2.7%減少し、2023年同月比では15.7%減となった。2025年1~8月も前年同期比3.7%減で落ち込んでおり、新型コロナウイルス禍前の2019年同期比では、21.6%減と大幅に減少している。
バッテリー式電気自動車(BEV)の国内販売台数シェアについては、8月は4.9%で、前年同月の3.7%からは増加しているものの、UNRAEはBEVの販売低調に危機感を表明し、8月8日に環境・エネルギー安全保障省が発表したBEV購入者への補助金政策の一刻も早い実施を切望した。
この補助金政策には、EUの復興基金「国家復興・レジリエンス計画(PNRR)」から5億9,700万ユーロが割り当てられており、9月8日付の官報に掲載された。BEV購入について、個人にはISEE(注)に応じて9,000ユーロから1万1,000ユーロ、中小・零細企業に対しては、商用のBEV購入価格の30%を上限とし最大2万ユーロが支給される。いずれも人口5万人以上の都市とその通勤圏内に居住・所在する個人または企業が対象となっている。
イタリアではBEVのシェアが他の欧州主要国に比べて伸び悩んでおり、電動化へのシフトが大きな課題になっていることから(2025年7月18日付地域・分析レポート参照)、今回のBEV購入者に対する補助金政策に注目が集まっている。
(注)Indicatore della Situazione Economica Equivalente(ISEE)。同等経済状況指標を指し、公共サービスにおける給付金支給の際などに必要となる世帯の経済状況の指標。収入や資産を申請して認定を受ける。
(平川容子)
(イタリア、EU)
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