拡大する欧州EC市場、繊維業界などから域外事業者への対策求める声

(EU、中国)

ブリュッセル発

2025年09月24日

欧州繊維産業連盟(EURATEX)は9月16日、欧州リネン・ヘンプ連盟および欧州16カ国の繊維業界20団体とともに、EUおよび加盟国に対し、ウルトラファストファッションの台頭に迅速な対応を求める共同宣言PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。特に、非欧州系プラットフォームで販売されたEU基準を満たさない製品の輸入増加に警鐘を鳴らし、域内市場の公正な競争の担保を要請した。

22団体によると、2024年の欧州の衣料品販売におけるウルトラファストファッションの割合は5%、オンライン販売では20%に拡大し、同年にEUに輸入された小包は約45億個に達した。ウルトラファストファッションは製品寿命が短いため繊維廃棄物が増加し、またEUの社会、環境基準を満たさない製品もあり、小売業を含む欧州企業の経営を圧迫していると強い懸念を示した。

そこで、(1)デジタル・サービス法(DSA)やデジタル市場法(DMA、注)に基づく監視と罰則の強化、(2)電子商取引(EC)プラットフォームに法的代理人を指名するよう要請、(3)少額貨物(150ユーロ未満)に対する輸入関税免除の廃止と小口小包への課税導入、(4)中国政府と同国のECプラットフォームの規制に関し協議、などの早期実施を提言した。また、消費者に対し、持続可能な製品の選択と、品質とイノベーションに投資する欧州企業への支援を呼びかけた。

続けてEURATEXは9月17日、合計63の市民・産業団体とともに、EUに対し、消費者保護およびEC市場における公正な競争環境の観点から、EUの関連法令の執行の徹底を要請する共同宣言PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

64団体は、現行法令ではECプラットフォームは最低限の責任のみ負う仕組みになっていると指摘した。そこで、(1)EU域内で上市(市場投入)される製品は、当局が確認可能な域内の事業者が法令順守の責任を負う、(2)現行法令を改正し、ECプラットフォームが第三国の販売事業者の製品について責任を持つ、(3)ECプラットフォームはコンプライアンス順守を徹底し、販売事業者の透明性を高める、(4)市場監視および税関当局の体制を強化することなどを提言した。

なお、欧州委員会は近年、域外のオンライン販売事業者への監視を強めている(2025年2月7日記事参照)。2025年5月には、中国のシーイン(Shein)による、EUの消費者保護関連法令の違反を認定(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委と調査を実施したフランス当局は同社に不当な価格表示や個人情報保護違反で罰金を科している (2025年9月9日記事2025年9月22日記事参照)。

(注)DSAとDMAについては、調査レポート「EUのオンラインプラットフォーム政策の概要PDFファイル(643KB)」(2023年2月)を参照。

(滝澤祥子)

(EU、中国)

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