欧州委、自動運転・コネクテッドカーや電動化分野で新たな施策を展開へ
(EU)
ブリュッセル発
2025年09月16日
欧州委員会は9月12日、「欧州自動車産業の将来に関する戦略的対話」(2025年2月6日記事参照)の第3回会合を開催した(プレスリリース)。欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が議長を務め、EUの電気自動車(EV)分野での国際的な主導権の確保、自動運転・コネクテッドカー分野の研究開発の加速やバッテリー部門への支援などが議論された。
早期に「自動車部門に関する産業行動計画」(2025年3月13日記事参照)を展開する必要性を関係者間で再確認するとともに、バッテリーなど3分野で、EUレベルでの研究開発の加速に向けた覚書を関係者と締結した。また、「欧州コネクテッド・自動運転車アライアンス」を立ち上げた。EU域内でのソフトおよびハードウエア、人工知能(AI)モデルの開発や投資促進を目的とし、自動車産業のあらゆる分野・規模の企業間の対話の促進、助言の場となる。欧州委やEU加盟国はオブザーバーとして参画する。参加企業を募り、10月後半に第1回会合を開催する予定だ。
さらに、新車の乗用車・小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出基準に係る規則の見直しや社用車のグリーン化、規制簡素化についても話し合われた。現地報道によると、欧州委は、フォン・デア・ライエン委員長が9月10日の一般教書演説(2025年9月11日記事参照)で打ち出した、域内産の安価な小型電気自動車(EV)の開発支援に言及したほか、CO2排出基準規則を2025年内に前倒して見直すことなどを表明した。
産業界が喫緊の課題とするCO2排出基準の見直しを巡り、欧州自動車工業会(ACEA)は会合後、依然として欧州委とは意見の相違があるが、「選択肢が広がりつつあり、今後数カ月以内に成果が出る」と前向きな見解を示した。欧州自動車部品工業会(CLEPA)
は、同基準は相当な見直しが必要であり、EU企業が先進性を有するハイブリッド技術、水素や再生可能燃料などの活用に向け踏み出すことが重要と主張した。
一方、バッテリー部門の団体リチャージは、企業の長期的な事業立案や投資が可能になるとして、2035年以降の内燃機関搭載車販売の実質禁止への支持を表明した。また、域内生産拡大に向け、欧州委が2025年7月に発表したメガファクトリー事業などへの助成(注)を「強力なスタート」と評価し、2028年以降の次期中期予算計画(MFF、2025年7月22日記事参照)でも支援が必要としたほか、バッテリーの域内調達の強化にも賛同する姿勢を示した。
(注)欧州委は2024年12月、EUのイノベーション基金を活用し、革新的なバッテリー技術開発事業への助成計画を発表し(2025年6月9日付地域・分析レポート参照)、2025年7月に6事業を採択した。助成額は合計8億5,200万ユーロ。全事業で2030年までに生産を開始し、製造能力は合計で1年あたり約56ギガワット時(GWh)の見込み(プレスリリース)。
(滝澤祥子)
(EU)
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