ドイツ、カナダと重要鉱物で協力拡大、供給網強化と脱中国依存を目指す

(ドイツ、カナダ)

ベルリン発

2025年09月01日

ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、8月26日にカナダのマーク・カーニー首相とベルリンで会談し、防衛産業や最新技術分野での協力、2国間の貿易の強化について確認した。さらに、両国は重要鉱物に関する協力の意向表明書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名し(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、ドイツ語)、サプライチェーンの強靭(きょうじん)化と安定供給、脱中国依存を目指す方針を明らかにした。

重要鉱物に関する協力は、採掘にとどまらず、中間加工や精錬、リサイクルといったバリューチェーン全体を対象とし、二酸化炭素(CO2)排出量削減や循環型経済(サーキュラーエコノミー)に配慮した技術開発を推進する。対象鉱物は、リチウム、レアアース、銅、タングステン、ガリウム、ゲルマニウム、ニッケルの7種で、資金調達には両国の公共投資や民間投資を活用。ESG〔環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字〕基準やEUのCRMA(重要原材料法)(2023年3月22日記事参照)を順守し、規制面での協調も約束した。今後は、両政府が設置するタスクフォースが進捗を管理する。

政府間協力の傍ら、具体的な企業間連携も進展している。ドイツの銅大手アウルビス(Aurubis)は、カナダの鉱業企業トロイラス(Troilus)と銅の供給契約を締結。さらに、ドイツのバクームシュメルツェ(Vacuumschmelze)とカナダのトーンガト・メタルス(Torngat Metals)、ドイツのエネルトラーク(Enertrag)とカナダのロック・テック・リチウム(Rock Tech Lithium)の間でも、協業に関する意向表明書が交わされた。カテリナ・ライヒェ連邦経済・エネルギー相は、今回の協力は産業競争力を高める意味でも重要であり、今後さらに拡大していく方針を明らかにしている。

この背景には、中国への依存度の高さがある。2023年1月に連邦経済・気候保護省(当時)が発表した調査結果によると、レアアースの80%以上が中国で採掘され、加工においても中国は重要な地位を確立している。供給の偏りは以前から指摘されていたが、政府は2025年8月5日に「永久磁石に関するレジリエンス・ロードマップ」を公表し、風力発電設備に不可欠な永久磁石供給の安定性を欧州全体で高めるための方策を打ち出した(2025年8月13日記事参照)。

ドイツ商工会議所連合会(DIHK)は、カナダをエネルギーと資源分野で重要なパートナーであると評価しつつも、さらなる協業先の開拓とネットワーク強化を求めている。

(打越花子)

(ドイツ、カナダ)

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